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の身に降りかかる。そうした話まである。
「人の集まるところにはそういうものも集まる。だがこの街はそれが特に多い」
「嫌なことですね」
「でだ。同じ位多いのが」
「また別のあっちの世界ですか」
「そうだ、今回はそれを念頭に置いて捜査をしていくからな」
山根は身を乗り出して言った。
「それでいいな」
「じゃああの一連の事件はやっぱり」
「これは勘だ」
刑事としての長年の経験の勘である。これが間違うこともあるが彼はこの時はそれを信じてみようと思ったのだ。外れたとしても捜査が動くからだという読みも実はあったが。
「あれはそのあっちの世界じゃない」
「別のあっちの世界ですか」
「そうだ、かなりやばいぞ」
山根の目に剣呑な光が漂った。
「洒落にならない連中かもな、やっているのは」
「向こうの連中ですかね」
尾松もまたその連中について考えはじめた。
「やっぱりそいつ等が」
「その可能性もある」
そして山根もそれを否定しない。
「一応密かに考えてはいくがな」
「はい」
「署長にもお話しておこう」
この言葉がこの事件がどれだけ危険なものであるかということを雄弁に物語っていた。
「うちの署長にですか」
「他に誰がいる?」
そう言って尾松に顔を向けてきた。
「いえ、そう言われると」
「大丈夫だ、あの署長はやる時にはやる」
そしてこうも述べた。
「だから信頼しろ」
「ですかね。あの昼行灯に」
今のこの署の署長は大学を出たインテリである。所謂キャリアではないが大学を出ているのでわりかし昇進が早かったのである。なお山根も尾松も高卒である。高卒と大卒で昇進に差が出るのは警察でも同じである。むしろ警察はかなりそれが顕著である。
「ここにおられるのも長かったしな」
「知ってるってことですか」
「そうだ、だから大丈夫だ」
だが何故か安心させる言葉には聞こえはしなかった。というよりは覚悟を迫る言葉に聞こえる。これはどうしたものなのかと尾松は思わざるにはいられないがその結論は結局彼が望まないものであるとわかっているので深くは考えないことにした。
「だといいですけれど」
「そういうことがあるからな。後ろは安心しろ」
「じゃあ警部の話信じますね」
念を押すように言う。
「ああ。それでな」
「はい」
「あのホテルの周りも調べていく」
「周りも」
「そうだ、どちらかというと周りに重点を置きたい」
「他のホテルが密集していましたね、確か」
尾松はあのホテルの周りを頭の中で思い出しながら述べた。何度も行き来しているのでもうその地図は頭の中にインプットされてしまっているのだ。
「高さも似たり寄っ
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