SIDESTORY「ラルフ・ヴィンセクト」&外伝の資料設定
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付くよ。君が移転したいのか、それともシャルロットを移転させたいのか……大体後者だろうけど?」
「……」
「ラルフ……」
アランは、真顔になってラルフの両肩を掴んだ。
「どうして、あの子に辛く当たるんだ? 彼女が初めて私たちの家に来た時からお前は常にあの子を憎んでいただろ?」
ラルフの行動は全てアランにお見通しであった。
「彼女だけは、他の女性とは違う。お前と同じようにISや女尊男卑の社会によって人生を狂わされた被害者の一人なんだぞ?」
「……」
しかし、ラルフは黙った。自分の過去と比べればあんな奴の過去なんてどうということはないと。
「だから? 俺は、何を言われ様とも``アレ``だけは認めません……」
ラルフは不機嫌に彼に背を向けて出て行った。
――まったく……とんだ息子だ。ああ見えて、本当は良い子なんだがな?
アランは深いため息をつくはめになる。
「……?」
嫌な気分のまま、自宅へ戻ったラルフは、食卓から漂う美味そうな甘い香りが彼の鼻先をくすぐった。
「おお……」
食卓のテーブルには焼きたての丸いアップルパイが置かれていた。
「アップルパイだ……!」
彼は、こう見えてアップルパイが大好物である。三度の飯よりもパイ、それがラルフの趣味だ。
「……!」
キョロキョロと周りを見渡して、誰も見ていないことを確認すると、彼はパイの一つを切り取って齧りついた。
「お、これ美味いよ? いつもジェーン母さんが作るのよりも格段に味が濃いしジューシーだ!」
彼は、それをペロリと頬張ると、誘惑に負けてもう一つと、二つ目を手に取った……
「こら、お行儀悪いわよ?」
と、そこでジェーンとシャルロットが出てきた。
「げっ……」
「あら、ラルフ? もう帰ってきたの?」
ジェーンが首を傾げた。
「あ、ああ……ところでこのパイ、誰が作ったの?」
いつもジェーンのパイを食べなれている彼は、彼女のパイの味を良く知っていた。だから、ジェーンが作ったパイではないことぐらいわかっている。
「そのパイはね? シャルロットが焼いたのよ?」
「……っ!?」
とっさに、ラルフは口の中のパイを吐き出そうとした。しかし、
「残さず食べなさい? さもなければお昼ご飯抜きよ?」
「……」
ジェーンは、普段はとても優しい母性溢れる女性だが、一時キレるとラルフさえも震えあがる怖さを秘めている。しかし、この事実は愛妻家のアランだけには内緒にしている。
「……」
仕方なく、ラルフはジェーン怖さに手に持った二つ目のパイを残さずに食べた。しかし、悔しいがこのパイはとても美味かった。
「そうだ、今からお茶にするところなの! ラルフもシャルロットのパイをもっと食べたいでしょ? お茶にしない?」
「い、いや……僕はこれからまた出かけるから……!」
と
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