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ゃないか」
かっての電化製品の街も今ではマニアの街である。変われば変わるものだ。街というのは生き物であり時と共に変わっていくものであるのだ。
「一瞬何処に来たのかと思ったぞ」
「そうですかね」
これは尾松の歳ではわからないことだった。首を傾げさせる。
「僕は別にそんなことは」
「昔を知らないからか」
「まあそれを言われると」
彼も昔の秋葉原のことは聞いてはいる。一応ではあるが。かっては電化製品の街だったとは。だがそれでそうなのかと実感出来るものではないのである。
「そうですね」
「何か、認めるのか」
「知らないのは本当ですから」
彼はそう答えた。
「それでですね」
「ああ」
「やっぱりあそこも随分変わってるんですよね、昔と比べると」
「そうだな」
煙草を吸い終わると新しい煙草を取り出す。すぐにそれに火を点けた。
煙を吐き出す。それが終わってから述べた。
「特に人がかなり変わったな」
「人がですか」
「あの商売はな、人の入れ替わりが結構あるんだ」
風俗のことである。
「場所を変えるとかな。戻ってきたりとか」
「そうみたいですね」
「それを考えても随分変わったな。消えた顔見知りもいるしな」
「消えたって」
尾松はそれにふと問うが実はおおよその見当はついていた。
「わかるな、それも」
「わかりたくないですけれど」
何かこうした話を聞いているとアキバ系というものから得体の知れないものになっていくように思える。それがどうにも嫌なものに感じる。薄気味悪く感じていた。
「人が消えるのも珍しくないんだ、実際はな」
「はあ」
「路地裏に入ってすうってな。そのままいなくなるってこともあるんだ」
「路地裏に」
「この街にはそうした路地裏が幾らでもある。気をつけろよ」
「驚かさないで下さいよ」
少し演技がけて言う。場を穏やかなものにする為であった。
「新宿なんかそうだろうが」
山根はあえて新宿を出してきた。
「あそこでちょっと入ってみろ。下手すりゃそれで終わりだ」
「それで・・・・・・」
「終わりだ。知らなかったのか?」
「噂でしょ」
「噂じゃない、事実だ」
そういう世界を見てきたからこその言葉であった。その言葉には妙な説得力があった。
「何なら行くか?」
「いえ、止めておきます」
尾松は真剣な顔でそれを断った。首も横に振る。
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