第二百四十一話 二度目の戦その五
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「出陣じゃ」
「はい、これより」
「屋島に向けてですな」
「出陣ですな」
「これより」
「水軍は堺と志摩に集めておるが」
水軍のこともだ、信長は言った。実は海から来ることも考えていてだ。信長はこの二つの地の港の水軍を集めていたのだ。
「志摩の水軍を堺に向けよ」
「そしてそのうえで」
「堺の水軍と志摩の水軍が合流して、ですな」
「屋島の海に向かわせる」
「そうされますな」
「軍勢は大坂じゃ」
安土にいるそれはというのだ。
「大坂に向かいじゃ」
「そこからですな」
「屋島に向かい」
「海と陸からですか」
「奴等を攻めますか」
「そうする、しかし屋島か」
この地のことをだ、信長はここで言った。
「面白い場所に来たわ」
「はい、あの地はです」
竹中が信長に言って来た。
「かつて義経公と平家が戦った地」
「鵯越の場所じゃな」
「あそこに来るとは」
「実に面白い」
「では上様は」
「うむ、義経公になるか」
冗談を交えてだ、信長は笑って竹中に返した。
「あの地でな」
「勝たれて、ですな」
「あの戦で源平の命運は決まった」
どちらのそれもだ、この戦で平家は壇ノ浦に逃げるしかなかった。源氏は完全に追う立場になったのだ。
「その様になるか」
「あの地で勝ち」
「では勝つぞ」
こうも言った信長だった。
「これよりな」
「はい、では」
「皆の者出陣じゃ」
あらためて言った信長だった。
「四十万の軍勢で進むぞ」
「畏まりました」
「さすれば」
「これよりです」
「我等も屋島へ」
皆こう応えてだった、そのうえで。
今回も長益が留守役となってだった。主な者達は大軍を率いて出陣した。そしてまずは都から大坂にだった。
向かった、その中でだ。
長政は家臣達にだ、こう言ったのだった。
「次でな」
「大殿の敵をですな」
「殿ご自身で」
「討ちたい」
切実な声での言葉だった。
「そう思っておる」
「では我等も」
「及ばずながら」
「ではな、ただ」
ここでまた言った長政だった。
「一つ思うことはな」
「はい、ここで焦ってはです」
「かえってよくありませんな」
「大殿を惑わした杉谷と無明」
「あの二人を討つにあたって」
「わしは焦らぬ」
決してとだ、長政も言うのだった。
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