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かったがそれは言わなかった。
「まだ先だ。そこを調べるのはまだな」
「その間にどうします?」
「とりあえず今ここでやることは終わった」
山根はベッドにまた腰を下ろして言った。
「署に帰るか」
「何の収穫もなしですか」
「いや、そういうわけでもない」
だが尾松のその言葉は否定した。
「少なくとも調べは終わった。この部屋はな」
「何もなしと」
「めぼしいところはだ。そして」
「そして?」
山根に問う。彼はまたあの凄みのある笑みを浮かべていた。本当に独特の笑みである。
「これが撒餌になるかもな」
「撒餌ですか」
「俺達が捜査しても何も見つからなかった」
彼は言った。
「三回調べてな」
「事件の度に」
「そう、事件の度にだ」
あらためて述べる。
「三回も調べてな」
「相手が人間ならどうですかね」
「間違いなくこれで自信を持つな」
「三回も調べられて見つからなかったことで」
「そうだ、そして」
「また仕掛けてくると」
尾松は問う。真剣な顔と声で。
「勘がいいな、今は」
「そうですかね」
山根の意外そうな顔には笑って返した。
「別にそんなつもりはないですけれど」
「いや、中々」
そう言って尾松を褒める。今は穏やかな笑みになっていた。元の顔があれなのであまりそうは見えはしないのだが。
「だがそこだ、罠は」
「罠ですか」
「ああ、罠は幾らでもある」
ベッドの上に胡坐をかいて不敵に笑う。
「方法もそれぞれだ」
「その中の一つですか、使うのは」
「いいな」
きっと尾松を見やる。
「それで」
「ええ、乗りますよ」
尾松は満足気に笑って返す。彼もまた山根の話と行動を楽しんできているのだ。
「その罠にね」
「言っておくが御前に仕掛けるんじゃないからな」
これは断った。前以てである。
「だから馬鹿な真似はするなよ」
「いやだな、信じてないんですか」
「そういう問題じゃない」
山根は表情を崩して返してきた。
「ただな、カードの勝負をしていて切り札がこっちにあるとする」
「ええ」
山根はポーカーに例えてきた。こうするとわかりやすいからであろうか。なお彼等の署の管轄下には非合法の賭博場も多数存在している。
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