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ホテル

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「二回目の事件か?」
「それはどんなのだったんです?」
「カップルだ」
「二人共ですか」
 尾松はそれを聞いて目を何か妙な感じに動かしてきた。これが癖なのかどうなのかは今一つわからない。
「大学生のな。カップル同士だったらしい」
「それが奇麗に、ですか」
「最初と同じだ。今度は携帯もバッグも奇麗になくなってたそうだ」
「そうなんですか」
「最初の事件はあれだ」
 山根はここでベッドの端を指差してきた。やはり何の変哲もないベッドの端である。
「ここに携帯とバッグが落ちていたらしい」
「へえ」
「それで風俗嬢だけが消えて二回目は何もかも消えた」
 確かに不思議な話である。人がそうそう簡単に消えるわけもないからだ。尾松も語る山根にしろそこに不気味なものを感じているのは確かなのである。
「そうなんですか」
「そうだ、じゃあ次は風呂場だ」
「そしてトイレですね」
 風呂場とトイレも見てみた。普通の洋式トイレだ。そこにも変わったところはなかった。二人はそこから出てまずはベッドの上に座り込んだ。それからまた話をした。
「まあ男同士でベッドにあがるのは」
「もう言わないでおこうな。惨めになるだけだ」
 山根は尾松にそう返した。言った後で懐から煙草を取り出す。
「火、あるか」
「私煙草やりませんので」
「そうか。だったら仕方ない」
 少し残念な顔をして煙草を元に戻した。
「それで三回目だが」
 それで止むを得なくといった感じを漂わせて話を再開させた。煙草を吸えなかったのが不満であるらしい。
「今度の事件ですね」
「今度は男だけだ」
「女の子でも待っていたんですか?」
「わかるか、それだ」
 山根は左の人差し指を顔の前で動かしながら言った。
「待っていて急にだ」
「気が変わって帰ったんですかね」
「財布を残してか?」
「今度は財布ですか」
「そこから身元がわかった」
 彼は言う。
「役者志望でな。フリーターらしい」
「お金ができて、ですか」
「まあそういうところだろうな。運転免許からわかった」
 身元の割れ方としては極めてよくあるパターンであった。これには何も不思議なところはない。
「何か若い奴ばかりですね。何でまた」
 尾松はそれを聞いて述べた。
「さてな。幽霊に聞いてくれ」
 山根は煙草が吸えなくて少し不機嫌そうであった。
「どうして若い人間ばかり狙うのかな」
「聞けたら苦労はしませんね」
 場違いだが真面目に答えを返してきた。
「そもそも人を連れて行く幽霊なんて怨霊に決まっていますし」
「本当に幽霊ならな」
「それどういう意味ですか?」
 尾松は何が何なのかといっ
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