第八幕その十
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「お米を貰うのならね」
「お礼としてだね」
「ええ、エメラルドを貰ってね」
「そこまで言うのならね」
マリューさんは大柄な身体にあるその二本の太い腕を組んで言いました。
「有り難く貰うよ」
「ええ、有り難う」
「そういうことでね」
「そうしてくれると私も嬉しいわ」
「じゃあお米はね」
「ええ、頂いていくわ」
「好きなだけ持って行ってね」
そしてと言うマリューさんでした。
「そのうえでね」
「そして、ですね」
「そう、それとね」
マリューさんはここでカルロスも見てでした、こうも言ったのでした。
「こちらの子は確か」
「そう、私が最初にいた世界から来たね」
「五人の子供達のうちの一人の」
「カルロスよ」
微笑んでです、ドロシーはお話しました。
「この子がね」
「そうだね、どうやらこの子は」
マリューさんはカルロスを見つつです、にこりと笑って言いました。
「運動神経が抜群だね」
「そうなの、五人の中でもね」
それこそと言うのです。
「一番運動神経がいいの」
「そうだね」
「ええ、サッカーとか得意よ」
「じゃあ畑仕事とかも出来るかな」
「畑仕事はあまり」
首を傾げさせてです、カルロスは先生に答えました。
「したことがないです」
「そうなんだね、けれどね」
「僕はですか」
「出来るね、運動神経だけでなくね」
それにというのです。
「体力もありそうだから」
「ううん、だといいんですけれど」
「農作業はね」
つまり畑仕事はといいますと。
「まずはやってみることだよ」
「最初はですか」
「そしてどんどんやっていくとね」
「それでなんですか」
「よくなっていくものだけれど君はね」
「向いてますか」
「そんな感じだね」
こう言うのでした、カルロス自身に。
「わしよりもずっとね」
「マリューさんオズの国で一番の米農家ですよね」
「いやいや、この土地がいいし」
マリューさんが今いるそこがというのです。
「わしだけじゃないからな」
「マリューさんだけじゃないんですか」
「わしに女房がいて」
そしてというのです。
「息子達や娘達がいてね」
「皆で働いてですか」
「それで作るものだからね」
だからだというのです。
「わしは自分をそうは思っていないよ」
「そうなんですか」
「わし一人ではね」
とても、という口調の言葉でした。
「何も出来ないからね」
「畑仕事はね」
かかしがここで言います。
「一人ではね」
「出来ることはですか」
「限られているしね」
「だからですか」
「そうだよ、わしも女房がいて」
またこのお話をしたマリューさんでした。
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