第33話
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のだが――。多少名のある武人が二人、後は民に毛か生えた程度の義勇軍だ。
華雄軍の面々が『舐められている』と錯覚するのも無理は無い。
「あん? 一騎飛び出して来やがるぜ」
「先程のように降伏勧告でもする気なのでしようか……」
「姉御にびびって向こうが降伏するんじゃねぇか?」
どっ、と笑いが起こる。
それが静まる頃、近づいてきた一騎の姿が解る所まで接近し――
「別嬪さんじゃねぇかッ!」
美しく長い黒髪、抜群のプロポーション、整った顔立ちに歓声が起きた。
「……おい」
緊張感を持たせようと華雄が部下を睨むが、その視線を勘違いした部下がフォローすべく言葉を続ける。
「も、もちろん姉御も別嬪ですぜ! 嫁さんになるのは想像できねぇけど……」
「余計なお世話だ!」
「ひでぶっ!!」
的の外れた言葉に拳が返って来た。手加減しているとはいえ、怪力を誇る華雄の拳は相当のもの。しかし部下達も頑丈で、目を回しながらもヨロヨロと立ち上がる。この一連のやりとりは華雄軍のコミュニケーションの一つである。
「我が名は関雲長! 猛将と名高い華雄殿に一騎打ちを所望する!!」
「……はぁ? 何が悲しくて義勇軍の将ごときと姉御が一騎打ちしなきゃならねぇんだ」
口汚い言葉だが、それは華雄軍全員の気持ちを代弁していた。
劉備軍だけならば簡単に蹴散らせるだろう、しかし背後には連合本隊が待ち構えている。
地の利を使い戦う事が最上なこの場にあって、何故自分からそれを手放し一騎打ちに応じると思うのか。
「……」
華雄軍の反応にを見て関羽は眉間に皺をよせる。
簡単にいかないことはわかっていた。だからこそ華雄の武に唾を吐いてでも挑発しなければならないのだが――
関羽が思い出すのは先程の華雄の姿。
圧倒的戦力差の連合に啖呵をきる華雄は正に理想の将軍。その見事な光景が頭にのこり、彼女に浴びせるはずの暴言を吐けずにいる。
しかし子供の使いとして此処に居るわけではない、己の信念を曲げてでも任を全うしなければ。
自分にそう言い聞かせ、口を開こうとしたその時だ。
「降りるぞ」
「な、華雄様!?」
部下に制止されながら華雄が姿を消す、恐らくは下に降りているのだろう。
―――なんだ?
関羽が感じたのは違和感。華雄が武に誇りを持ち、好戦的な性格であることは聞いている。
しかし実際に目にした華雄は、荒々しくも研ぎ澄まさせた闘志を漂わせていた。
それ程の武人が挑発されていないにも関わらず地の利を捨てるだろうか。
確かに一騎打ちを成立させるため、軍を大分後方に置いて来たが――
「いや、今は目の前に集中すべきか」
猛将華雄
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