第33話
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お前達はすでに包囲されている。諦めて武器を捨てなさーい』
この時の為だけに誂えたトレンチコート風の衣服で警告する、無駄に派手な配色は仕様である。
そんな袁紹に猪々子はキラキラと瞳を輝かせ、斗詩は白い目を向けていた。
――そんな目で見るな斗詩、降伏勧告は義務なのだ。
やがて華雄軍の中から一人前に歩み出た。
その姿には見覚えがある、初の武芸大会で恋に敗北した華雄本人だ。
同一人物だが袁紹は一瞬別人かと錯覚した。それ程に彼女の纏う空気が変わっている。
おそらくあの敗戦から、一日も休まずに研鑽してきたのだろう。
「私が華雄だ! 今は董卓様の家臣である事を排し、大陸に住む一人の民として問う」
『聞こう』
「どのような理由で天子様の居る洛陽に刃を向けている……答えろ!」
『知れたこと、暴政を働く董卓から救出するためである』
「……そのためならば刃を向けても構わないと?」
主である董卓を擁護するのは簡単だ、しかし証拠が無ければ意味を成さない。
そして仮に、主の汚名を返上する確固たる証拠があっても連合は止まらないだろう。
既に賽は投げられているのだ。
だからこそ、天子の存在を引き合いに出したのだが――
『主が危機に瀕しておればそれを助ける。又、主が道を踏み外せばそれを正すのが真の忠臣だ。
今度は我が問おう、華雄――お主は忠臣か?』
「!?」
袁紹の問いに華雄は顔を伏せ肩を震わせる。
怒りからではない、恥辱でもない、悔しさでも憎悪でもない。この感情は――歓喜だ!
この場に至って尚、華雄にはある疑問があった。
主である董卓の暴政は当然彼女の耳にも入った。その時は張遼と共に馬鹿馬鹿しいと鼻で笑ったものだ。
しかし火の無いところに煙は立たない。なまじ生粋の武人である華雄は、主を信じてはいるものの噂の真意を確信できなかった。
そこで彼女は来たる連合との戦いに皆が鍛練を積む中、一人抜け出し洛陽の街を調査した。
調査と言っても簡略的なもので。小汚い布で身を覆い、物乞いに扮して街角に座り様子を窺うというもの。
洛陽の街の住民達は連合軍の噂で不安そうにしていたが、どの者達も一様に主を心配していた。
そして極めつけは街の男達だ。彼等は老いも若いも関係なく兵士に志願し、董卓軍の規模は倍近く膨れ上がった。
暴政が行われていればこのような事は起きない。
――やはり、我が主は潔白だったのだ!
そして死地へと向かう覚悟が出来ると同時に疑問が生まれる。
――自分は本当に、忠臣なのだろうか
同じ将である張遼は噂を歯牙にもかけなかった、それに比べ自分はどうか。
華雄の思う忠臣は主に疑問を
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