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恋姫†袁紹♂伝
第33話
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水関の門を確保しようと言うもの。

「……」

 全体を見れば趙雲隊が割を食いそうだが、義勇軍である劉備達に門の確保は難しい。
 まさに適材適所、利に適っている。最終的に星はこの要請を受けた。

「趙雲、貴女ほどの武人と共に戦えるのは光栄だ」

「それは此方も同じ事、後ろは気にせず行かれよ」

「……ああ!」

 自軍の隊列に戻っていく星の背中を、関羽は頼もしそうに見つめる。

 二人はまだ二度ほどしか顔を合わせていないが、互いの力量は察している。
 自身と同等、あるいはそれ以上。
 特に趙雲の軍勢は良く鍛え上げられているようで、隊列に乱れも無く動いている。
 それだけでも精強さが窺えるが、注目すべきは兵士達の顔つきだ。
 どの者達も水関を静かに見据え静観している。恐怖心などの類は一切感じられず、それでいて闘志を燃やす瞳。
 あの軍勢であれば無理難題な指示にも従い、それを成せるだろう。そしてその兵を鍛え上げたのはあの趙雲。

 ――あの者が我が軍に居ればどれだけ……

 関羽は頭を振り雑念を払う。

 義勇軍という形ではあるものの兵を、そして将来有望な軍師二人に関羽と張飛。
 劉備軍はまだまだ大きくなるだろう、そこに必要不可欠なのが武将だ。
 いっそのこと趙雲を勧誘したい所だが、袁紹軍と劉備軍では待遇に天と地ほどの差がある。
 それに彼女は飄々としているが、主である袁紹には他の者達と変わらない忠義を持っている様子。

「……ふぅ」

 小さな息を吐くと共に意識を切り替える、開戦は間近だ。






「華雄様、いよいよですね」

「ああ」

「姉御が居れば俺らに負けはねぇ、そうだろてめぇ等!!」

『応ッッ!』

 華雄軍は水関の上に布陣、そこから連合軍を眺めていた。

 地平線を埋め尽くさんばかりのその光景は圧巻の一言。しかし、戦力差に劣る華雄軍の士気に乱れは無い。
 それどころか、どこからでも掛かって来いと言わんばかりに高揚していた。

「……」

 それが絶望から自分達を紛らわせる為のものだと華雄は理解している。
 本来ならば絶望し、武器を落としかねない光景なのだ。彼等が士気を維持できているのは華雄の存在が大きい。
 圧倒的な軍勢に堂々と立ちはだかるその姿は、華雄軍全員の心の拠り所だ。

 華雄は自身の存在が如何に重要なものか再確認した。






『あ、あーテステス。本日は晴天なり〜』

 緊張感で張り詰めいてるその地に、似つかわしくない声が響き渡る。

 黄金の御輿に座り連合の先頭でそれをするのは、何を隠そう我らが迷族(袁紹)だ。
 天和達から借り受けた拡声器の調子を確かめ、声を張り上げる。


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