第33話
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軍儀を終えた袁紹は自陣に戻ると、星に劉備軍への援軍の件を説明した。
「そんな……主殿は私をもう要らないと申すのですか」
よよよ、と乙女座りからの泣き真似。彼女のそれが演技である事は皆熟知している。
しかし解っていても尚、美女の弱弱しい姿と言うものは心に響くもので。彼女の部下達は仇を見るような視線を袁紹に向けていた。
「こ、これ! 人聞きの悪いことを言うでない。戦力として貸し与えるだけだ、我が星を手放すはず無かろう!!」
だからいい加減演技を止めよ。
袁紹に対する男達の嫉妬は目を見張るものがある。袁家の必要経費に壁修繕の項目が追加されるほどだ。
慌てふためく袁紹の姿に満足した星は、意味深な笑みと共に立ち上がった。
「仕方ありませぬなぁ……では、メンマ一年分で手を打ちましょう」
「く、やむを得ぬ」
「フフ、決断の早さは流石ですな」
以前は袁紹の弱点を見破れなかった星。それもそのはず、彼の弱点は自身でなくその周りにあるのだ。
他者を重んじる袁紹は誰かが傷つくことのみならず、負の感情にすら敏感に反応する。
袁紹を慌てさせるのに効果的なのは周りを利用する事だった。
「指揮に従うかどうかは星の判断に任せる、向こうもそれは承知済みだ」
「……ふむ」
聡い星はその一言で理解する、余りにも割を食う指示には従わずとも良い――と。
「この任はお主が一番の適役者だ。頼むぞ星!」
「任されましょう、大船に乗った心算で帰りをお待ちくだされ」
一見いつも通りの星だが、彼女の瞳の奥に闘志が漲っていた。
久しぶりの実戦と言うのも理由の一つだが、なによりも袁紹から頼りにされた事が大きい。
袁紹は物事を一人で抱え込む傾向がある。そんな彼から、武では数段上を行く恋や、幼少期からの付き合いで一番信を置いているであろう猪々子や斗詩でも無く、この趙子龍を!
「フフ、フフフ!」
袁紹と別れ、兵の編成へと向かう星の足取りは軽かった。
それでいて全身に力が漲る感覚、今なら単身で水関を突破出来るのではないだろうか。
現実を見据える星がそのように仮想するほど、彼女はやる気に満ちていた。
そして明朝、まだ日が昇りきっていない時刻。開戦を前に星は兵を連れて劉備軍に合流、簡単な挨拶を済ませ諸葛亮からの指示を聞いていた。
「ふむ……後詰めか」
「はい」
狙うは敵将華雄。その挑発による誘き出しと討伐を任されたのは、劉備軍きっての使い手関羽。
華雄を討ち果たした後その軍が出てくるはず、そこに星は彼女の兵、そして劉備軍の将の一人である張飛と共に突貫。
関羽と張飛達に華雄軍の相手をさせ、突破力の高い趙雲隊で
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