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ホテル

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の生首の写真が今でも生々しくこの事件のことを伝えている。
「その前は陸軍士官学校があってな」
「はあ」
「かなり厳しい訓練だったからな。それでも何人か死んでいるんだ」
 地獄とまで言われた陸軍士官学校である。他には自殺の話も多い。これは江田島の海軍兵学校でもそうだが軍では自殺の話が多いものである。その理由は色々であるが。
「相当なものだったんですね」
「陸上自衛隊でもこんな話は結構あるんだ。他にも色々とある」
「そうなんですか」
 軍隊には付きものの話である。そうした幽霊の話が尽きることはない。それは警察も同じであり何処そこの殺人現場に出るとかそうした類の話は枚挙にいとまがないのである。
「だからだ、あそこも色々言われているさ」
「やっぱり」
「ホテル側もそうした話を隠したいんだろう」
「けれど失踪があったのは事実ですね」
「ああ」
 山根の顔が険しくなった。しかめ面がさらに厳しくなる。
「行くぞ」
「はい」
 尾松は立ち上がった彼に応えた。
「二人で行くか」
「営業妨害にならないように」
「ああしたホテルは何かと五月蝿いからな」
 山根は顔を顰めさせて言った。どうにも思うところがあるらしい。
「静かに行こう」
「厄介ですね」
「じゃあ営業妨害で訴えられたいか?」
 山根はクールな声でそう述べた。いや、クールであるというよりは醒めた感じであった。
「警察の不祥事になるんだぞ」
「けれどラブホテルですよ」
「ラブホテルだからだ」
 彼は言う。
「余計に五月蝿いんだ、いいな」
「わかりました、じゃあ」
 二人はその足で事件のあったホテルに向かった。まず二人が出たのは何処にでもある駅前であった。
 本屋があってロイヤルホストがある。タクシー乗り場もあるごく普通の駅前である。
 駅の出入り口から見て左手に繁華街がある。道を見れば中華料理店やコンビニ、そして牛丼屋等がある。本当に何処にでもある街並である。
「行くぞ」
 山根は駅前で出る時に私服に着替えてきた尾松に声をかけた。一応の変装である。この辺りは何かと警官を警戒するのでその為である。実はこっそりとモグリの売春業者もいたりするのだ。ホテルの部屋の中では中々わかりはしないが。
「道はもうわかってるな」
「おかげさまで」
 尾松はそれに答える。
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