十七話:至誠通天
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、切嗣だけはそれを認めるはずがない。
「この範囲での爆発だと逃げ遅れる人間が出てくる…ッ。僕の計画通りなら全員の避難が可能だったものを…!」
「くくく、計画にアクシデントは付き物だろう?」
「人為的に起こしたものをアクシデントと呼ぶか…ッ!」
「いやいや、これは偶然さ。おや? ドゥーエからの連絡だね。どうやら逃げ遅れた人々が100人ほど火の海の中に取り残されているらしい。ふむ、実に由々しき事態だ」
画面の向こうで笑みを浮かべるスカリエッティを視線だけで人が殺せそうな迫力で睨む切嗣。
続けて一体誰のせいでこのような事態になったのかと怒鳴りつけようとしたところでスカリエッティがゾッとするような冷たい笑みを見せる。
その普段は見せることのない表情に思わず出かけた言葉を飲み込んでしまう。
そこへ、どこまでも残虐で遊び心に満ちた提案が出される。
「さて、取り残された哀れな人々がいる。このままでは彼らは間違いなく死んでしまう。
しかし、幸運なことに今その場には―――正義の味方がいるじゃないか」
ねっとりとした蛇のような眼差しが切嗣を射抜く。
何を言っているか分からずに一瞬呆ける切嗣だったが、すぐに業火のような怒りが湧き立つ。
誰かを救う為にその誰かを自分で傷つけ、それから助けろと言っているのだ、この男は。
偽物だとか、本物の正義の味方の問題ではない。ただの異常者の行動だ。
言葉では到底言い表せない憤りをぶつけるように、切嗣は低く唸るような声を出す。
「自分で起こした火災から人を救い正義の味方になるだと? この上なく醜悪な自作自演だな」
「くくく! 何、心配することはない。これは不運な事故だよ。君はその事故の対処をするのであって自作自演をするわけではない」
確かに自作自演ではないかもしれない。
あくまでも切嗣は人が犠牲にならないように爆破を起こした。
そして、自分ではない人物が起こした火災現場に救出に向かう。
別に切嗣は自身が起こした爆発の後始末をするわけではないので自作自演ではない。
しかし、誰がどう見てもそれは滅茶苦茶な理論だ。
殺人犯が人を殺した帰り道に、迷い人に道を教えたから善人だと言っているようなものだ。
これは、もっと醜悪でおぞましい何かだ。
「以前言わなかったかね? 所詮は正義の味方も己の正義という名の欲望を満たすエゴイストに過ぎないのだと」
「だからといってこんなことが正しいはずがないだろう! こんなのは間違っているッ!」
歪んだ正義ですらこれを正しいと結論付けることはないだろう。
それほどにおかしいことだ。
だというのに、スカリエッティはさらに笑みを増すばかりである。
「くは
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