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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
外伝 黒の修羅 中編
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殺人、強盗、横流し、強姦―――凶悪犯罪のオンパレードだ。
 そのため、日本帝国軍では男女問わず、常に数人で行動するように指示が下りている。
 この区画は斯衛軍の陸戦部隊が警護を行ってくれているが、同じ日本人であっても気を抜けば犯罪の餌食となる可能性はある。

「うん、わかってる―――でも、どうしても今夜逢いたかったんだ。」
「……取りあえず入れ。」

 断る理由もそれほど無いので彼女を室内に通す。

「待っていろ、茶でも入れる。」
「うん…」

 机の上に放置していた電気ケトルのスイッチを入れ湯を沸かす。同時に二人分の湯飲みと茶葉を取り出して準備を進めていく。

 その間、少女は無言だった。俺も無言だった。
 彼女がどんな用があって訪ねてきたのかはあまり予想は付かない。この半島に渡ってきてから死にかけたのは一度や二度では済まない。

 同期たちも随分数を減らしてしまった、生き残っても薬物の過剰投与で一生退院は出来ないであろう病院行きだ。

「……ねぇ。」
「なんだ。」

「こうしてるとさ、君が斯衛軍に行くって言った日を思い出すよ。」
「そうか。」

 師匠の内弟子として住み込みで剣の鍛錬に励むようになって数年、その数年間はこいつと一緒だったと言ってもいい。

「……ほんとはね、私君のこと最初は嫌いだったんだ。」
「知っている、剣術の初心者だった俺に何かと突っかかって来たからな。」

「そりゃそうだよ、あの道場は私が継ぐんだって小っちゃな頃から頑張って来たのに、ある日突然こいつに道場を継がせる、お前はこいつの嫁になれ。って行き成り言われたんだもん。」
「納得できない気持ちは分かる。」

「だけど、君は私なんて眼中になかった。どうやったら最強になれるか、そればっかり。口を開けば打ち込みはどう、剣捌きはこうそればっかり。
 ―――それで、思ったんだ。剣客(けんかく)として負けたなって。」

 寝具(ベット)に腰かけた少女が昔を思い出して懐かしそうに言葉を紡いでゆく。
 ―――いつ頃からだろう、この少女があまり突っかかって来なくなったのは。
 最初のころは竹刀を握って、私と戦え!と突撃してきてたのに、いつの頃か太刀筋はこう、あそこでもっと打ち込んで、など剣術の中身を論議するようになっていった。

 そこまで思い出したところでちょうど湯が沸いたので、湯飲みに茶掬いを置き茶葉を入れてから湯を注いだ。


「お父さんのこと、最強だと思っていた。そして頑張ってればいつかお父さんがその最強を私にくれる……そう思っていたんだね。
 それを横取りされて怒って、ほんと子供だったよ。」

 剣術を継承する資格とは、単に教えられたものをそのまま保存するだけの媒体ではない。
 それであれば今時、
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