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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
外伝 黒の修羅 中編
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に柔らかいし。」

 と言って、自分の頬をつまんで引き延ばす少女。整っている顔が台無しになる。
 だが、なんというか―――

「そこでそっちに行ってしまうのがお前の残念な所なんだろうなぁ。」

 あほの子を見る優しい眼差しを向けてしまう。

「ははは、可愛いじゃないか。まぁそこで女性の……その、特有の武器を使わないのは確かに残念美人な所だと思うけど。」
「ん?どういうこと?」

 甲斐の言い回しに首を傾げるアホの子。それに軽く頭を抱える。
 どうして戦術や戦略的なことになると鋭い見地を持つのに、こういう事には頭が回らないのか。
 きっと集中力の差なのだろう―――彼女はスイッチが入っているときと入ってない時の差が著しい。


「甲斐、お前は此奴に色仕掛けをさせてどうする気だ?己を落とそうにも此奴は最初から己の許嫁だぞ。」
「オレの女だなんて……」

「それは言ってない。」


 甲斐に物申す、そして即座に戯言を一刀両断する。
 あながち間違ってはいないのだが、頬を抑えてクネクネしているのがなんとなく腹が立ったからだ。


「おや、色仕掛けに落ちたほうが君の望みは叶うと思ったんだけど?」
「―――己は責任の取れないことはしない。」
「責任も何も、当然の事だろ君たちの間柄では。」


 甲斐の言葉に思わず眉を潜めた、そしてその視線を傍らで分けが分からず小首を傾げている女に向ける。
 確かに、その手段を用いれば彼女を日本に送り返すことは容易だろう。だが、いつまで自分が生き延びれるか分からない以上、その手段は取れない。

「それでもだ、己は守りたい者を守れない―――そんな結末は赦せない。」


 最後の言葉を口にしたとき、ドクンと胸の中で心臓とは違う何かが拍動した。
 熱い、熱い。
 これはなんだ、その思いがずっと俺を駆動させ続けていた最初の歯車のようにさえ感じる。

 己を動かし続けた歯車は、正義の味方になりたい。という悪業だったはずだ。
 自分の中に、エンジンがいくつもある様にすら感じる。

「…………」

 自分の中で動き始める違和感、それが一体何なのか分からず混乱している己。それを見つめる視線があったのに己はその時は気づけなかった。







 とんとん、乾いた扉をたたく音が響く。それに読書を止め、立ち上がると扉を開ける。
 そこにいるのは黒髪の少女、短く切った髪が揺れていた。

「こんな夜更けにどうした、女一人が出歩くのは危険だぞ。」

 最前線の補給基地だ、ここにいるほぼ全員がBETAとの日々の戦いで緊張を強いられ、多国籍軍であるが故の国家間、民族間の軋轢、さらに犯罪者を前線に投入している国家も多く、犯罪の温床となっている。

 
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