アインクラッド編
平穏な日々
紅色の策略 05
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
激しく擦れ合う音を聞きながら、その直後に舞い降りた1人の少女にキリトは目を奪われた。
「間に合った……間に合ったよ……神様……間に合った……」
震える声で風は続ける。
「生きてる……生きてるよねキリト君……」
「……ああ……生きてるよ……」
キリトの掠れた声を聞いた風……否、閃光のアスナは、治癒結晶でキリトのHPを回復すると、一瞬だけ小さく微笑んだ。
「待っててね。 すぐ終わらせるから……」
立ち上がり際に囁いたアスナは、そのまま躊躇うことなく細剣を抜く。 絶対零度の厳しい眼光とは別種の、憤怒の業火に満ちた瞳はクラディールを捉えていた。
ーーーーこいつがキリト君を
殺そうとした。
ギリっと歯を食いしばると、アスナを見て今更な言い訳の言葉を無視して細剣を突く。 怒りで剣先が鈍っているのか、クラディールの口を掠めただけの攻撃に、けれどもクラディールは大袈裟に仰け反った。
ようやく言い訳が通用しないと悟ったのだろう。 クラディールは大剣を振りかぶり反撃に出ようとする。
だが、アスナの剣尖がそれを許すはずもなかった。
宙空に引かれる無数の光の帯。 剣先はキリトの動体視力を以ってしても捉えることはできず、ひたすらにクラディールのHPを喰らい続ける。
HPが赤の危険域に達した段になって勝ち目がないと理解したクラディールが剣を放ると両手を上げ、地面に這い蹲るようにして命乞いを始めるが、それらの言葉をアスナは全て無視した。
否、アスナはクラディールの命乞いを、それ以前にクラディールの存在を正しく認識できていないのだ。
ーーーー許サナイ
ーーーーキリト君ヲ殺ソウトシタコノ男ヲ許サナイ
ーーーー殺ス
ーーーーキリト君ヲ殺ソウトシタコノ男ヲ殺ス
ーーーー殺ス!
ーーーー殺ス??
正常な思考の働かない状態で、アスナは殺意の赴くまま最後の一撃を……
『私は認めません?? 絶対に、絶対に認めません??』
振り下ろす直前に止まった。
頭の中で響くのは、かつての自分の言葉。
『たとえ大切な人の仇だからって、人を殺していい理由にはならないはずです??』
かつて、殺人を犯した友人に向けた断罪の言葉。
『復讐は何も生まない! そんなことはあなただってわかっているでしょう??』
まるで今の自分を責め立てる鋭利な言葉。
『フォラスさん??』
そう。 仲間を殺され、狂気の赴くままに復讐していたフォラスを責めた時の言葉だ。 あの頃のフォラスを真っ先に責め立てたのは誰あろうアスナだった。
だと言うのに、自分は一体何をしているんだ?
その疑問がギリギリの位置で細剣を止めた。 あるいは
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ