アインクラッド編
平穏な日々
紅色の策略 05
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みろよぉ……」
尚も譫言のように囁くクラディール。
ことが起こったのは迷宮区を目前にした休憩時のことだった。
ギルドから支給された固焼きパンと瓶に入った水と言うなんとも質素な昼食にため息を吐きつつ、水で喉を潤したキリトたちに、一斉に麻痺毒が襲いかかったのだ。
何が? 誰が?
そんな疑問は既に意味をなさない。
ただ1人麻痺を逃れたクラディールは狂気の哄笑と共にフォワード隊の責任者、ゴドフリーともう1人の団員を躊躇なく殺した。 そして今、キリトをすら殺そうとしている。
「おいおい、なんとか言ってくれよぉ。 ホントに死んじまうぞォ?」
自身のHPが危険域にまで落ちているが、それをキリトはどこか遠い世界の出来事のように眺めていた。
諦念。
ここでこれ以上抵抗しようとも無意味なのだと、諦めていたキリトの脳裏にとある人物が浮かぶ。
純白と真紅の騎士服を着た少女。 少女と見紛うほど可憐な顔立ちをした小柄な弟。
誰などと問うまでもない。
アスナとフォラス。
ーーーー俺がここで死ねば、アスナにこの男の毒牙が向けられる……
ーーーー俺がここで死ねば、フォラスはどんな手段を用いてでも犯人を特定して、そして絶対にこの男を殺す……
それはキリトが死ねば確実に起こる絶対の未来だろう。
「くおっ??」
故にキリトは両の眼を見開き、自身のアバターに突き刺さっているクラディールの剣の刀身を掴んだ。
「お……お? なんだよ、やっぱり死ぬのは怖えェってかぁ?」
「そうだ……。 まだ……死ねない……」
「カッ?? ヒャヒャッ?? そうかよ、そうこなくっちゃな??」
必死に抗い、片手で剣を引き抜こうと試みるキリトと、狂気に惑い、キリトを殺さんと剣に全体重をかけるクラディール。
結果は明白だ。
いかにキリトのレベルが高く、筋力値で勝ろうとも、片手と両手では勝算はない。 そうでなくとも麻痺毒に侵されているのだ。 この抵抗も死の刻限を十数秒遅らせるのが精一杯だろう。
それでも諦めるわけにはいかないのだ。
強いようでいて脆い少女のために。 いつも飄々としているくせに繊細な弟のために。
「死ねーーーーーッ?? 死ねェェェーーーーーーッ??」
金切り声を上げたクラディールの顔が愉悦に歪む。 キリトの死はすぐそこに迫っていた。
それでもキリトは諦めない。 諦めるわけにはいかない。
ーーーー俺は……
ーーーーまだあいつに何も伝えてない……
ーーーーだから頼む……
ーーーーどうか保ってくれ……
瞬間、純白と真紅の色彩を帯びた風が吹いた。
ギャリンッ、と。 不快な、それでも耳に馴染んだ金属同士が
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