第一章
[2]次話
白夜
スウェーデンは寒い、しかも寒いだけではなく。
日の出方が他の国とは違う、夜が長い間続く時もあればだ。
日がずっと出る時もある、それも何日も。これが白夜だ。
その白夜を窓の外から見つつだ、アルノルド=レンネゴートは家族に言った。
「明るいね」
「当たり前だろ」
「今は白夜よ」
家族である両親がアルノルドにすぐに返した。十五にしては随分と背が高く青い目にブロンドの髪を持つ高い鼻と太く黒い眉が目立つ息子を見つつ。
「それで暗い筈がないだろ」
「夜でもね」
「そういうものだろ、今は」
「そうじゃないと白夜じゃないわよ」
「そうだよね、白夜でもね」
それでもとだ、彼は言うのだった。
「寒いし」
「ここはスウェーデンだぞ」
「寒くて当たり前でしょ」
今度はこう言う両親だった。
「何を当たり前なことを言ってるんだ」
「何か思うことあったの?」
「まさか外に出たいのか?」
「外は寒いわよ」
「いや、そうじゃないけれど」
それでもとだ、アルノルドは言うのだった。
「気になることがあってね」
「気になること?」
「それは何なの?」
「いや、何でもないよ」
アルノルドはここから先は言わなかった。
「別にね」
「ただ白夜が気になっただけか?」
「そんな当たり前のことがなの」
「それだけだよ」
こう言って誤魔化すのだった。
「別に何でもないから」
「じゃあいいけれどな」
「白夜なんて別に珍しくないでしょ」
「ここはスウェーデンなんだからな」
「観光客の人なら珍しいって思うけれど」
「そうだね、僕もここで生まれ育ってるから」
それならと言ってだった、そして。
アルノルドは窓の外を見つつお菓子を出してそれを食べつつ甘い果物のジュースを飲んだ。そうしたことをしつつ思うのだった。
そして次の日だ、彼は学校に登校してだった。クラスメイト達にこんなことを言った。
「昨日結構遅くまで起きていたよ」
「ゲームでもしていたのかよ」
「それともDVDでも観てたか?」
そういう手のDVDを、である。
「といってもずっと夜じゃないけれどな」
「白夜だからな、今は」
「夜も昼もないぜ」
「少なくとも日は落ちないからな」
「うん、ただ白夜を見てお菓子食べてジュース飲んでたんだ」
そうしていたというのだ。
「それだけだけれど」
「何だよ、それだけか」
「そうしながらゲームとかじゃないのか」
「そうしなかったのか」
「白夜なんか見てどうするんだよ」
「何となくだよ」
それだけだとだ、彼は返した。ここでも白夜を見つつ思っていたことは言わなかった。
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