第五章
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「さもないと勝てないからね」
「全く、五月蝿いな」
「五月蝿くても言うわよ」
「やれやれだな」
岳は口煩い、しかも押し付けがましい優花にうんざりしたものを感じた。それで反発するものを感じてもいたが。
優花がだ、あまりにも強く言うからだ。
スナックやコーラを口にするのを控えて甘い野菜や果物、牛乳や野菜ジュースを飲む様にして。
準備体操等にも力を入れてシャワーから風呂に切り替えた。すると。
怪我をせずにだ、それに。
身体もこれまでより軽くなってだ、実際の試合までに調子を上げていって。
試合にも勝った、実は練習試合だったがそれでも鮮やかな勝利を収めてだ。顧問の先生に笑顔で言われた。
「随分よかったな」
「ええ、従妹のアドバイス聞いたら」
「八神優花さんだな」
「はい、勝てました」
「そうか、いい従妹だな」
「よくないですよ、物凄く口煩いですから」
「しかしその娘のアドバイスを聞いて御前は勝ったな」
先生は岳にこの事実を指摘した。
「それならな」
「今回のことはですか」
「その娘のお陰だよ」
「そうなりますか」
岳は先生に言われてだ、考える顔になった。
そしてだ、次の日登校の時に試合のことと先生に言われたことを話した。
「そうなったよ」
「よかったじゃない」
「試合に勝ってか」
「ええ、それでね」
「御前のことも言われたんだぞ」
「それはどうでもいいのよ」
自分が言われたことはというのだ。
「いいものでも悪いものでもね」
「そうなんだな」
「お兄ちゃんが勝ってよかったわよ」
「怪我せずにか」
「そう、それでよかったわ」
にこりと笑ってだ、岳に言うのだった。
「試合に勝ててね」
「それで充分なんだな」
「私としてはね」
「そうか、それじゃあな」
そこまで聞いてだ、岳は。
視線は相手から逸らしているがだ、それでも彼女に言った。
「これからも頼むな」
「頼まれなくても言うから」
「そうか、そうするんだな」
「これからもね」
「じゃあ聞いてやるよ」
「聞かせてあげるわよ」
岳は少しだけ笑って、優花はにこりと笑ってだった。そのうえで。
二人はこの日も一緒に登校した、従兄妹同士ではあってもそこにある絆は兄妹と言っても全く差し支えのないものだった。言われて言う間柄であるからこそ。
天敵 完
2015・6・21
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