第三章
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「あんな変な妖怪いないよ」
「言っていることがわからないよ」
「言ってることいつも嘘だよね」
「天邪鬼は嘘吐きだよ」
「言ってることが信じられない」
「嘘ばかりじゃないか」
こう言ってです、天邪鬼を嘘吐きと思い相手にしませんでした。それは人間の子供達も同じでした。
それでも天邪鬼は言っていることは変わりません、やっぱり思っていることとは逆のことばかり言います。その天邪鬼がです。
ある日です、村にいる人間達に言うのでした。
「ここから行くな!」
「また天邪鬼か」
「何が行くな、なんだ」
「今度は何だ?」
「どんな嘘を吐いてるんだ?」
「洪水が起きない!」
大声で皆に言います。
「大雨で洪水が起きない!だから逃げるな!」
「洪水が起きない?」
「じゃあいいだろ」
「それじゃあな」
「何でもないだろ」
「だったらな」
「別にな」
「それにだ」
ここで皆お空を見上げました、するとです。
そのお空は青くて雲一つありません、本当に奇麗なものです。
そのお空を見てです、皆言うのでした。
「雨なんか降るか」
「降る筈がないだろ」
「こんな天気でな」
「どうして降るんだ」
「洪水なんて起きるか」
「そんな筈ないだろ」
「何当たり前のことを言ってるんだ」
皆言います、ですが。
その人間達にです、妖怪の皆が言いました。彼等も村に駆け付けて、です。
「いや、天邪鬼は逃げろって言ってるんだ」
「この村からね」
「洪水は起こるよ」
「それも村全体を飲み込むものがね」
「起こるよ」
こう言うのでした。
「だから逃げて」
「すぐね」
「けれどな」
人間達は必死に言う妖怪達に返しました。
「あいつは行くなとか言うし」
「どっちがどっちなのか」
「あいつ嘘吐きだしな」
「どうなのかわからないだろ」
「嘘なのか本当なのか」
「それが」
「ああ、わからないんだよ」
「逃げるべきなのかってな」
残るべきか、村の人達はそれがわかりかねているのです。
「あいつ思っていることと逆のことを言うんだろ?」
「つまり嘘しか言わないんだよな」
「じゃあ信じられないよ」
「行くなって言って実は行くのか」
「本当に行くな、なのか」
「どっちなのか」
「それがわからないんだよ」
「だからね」
妖怪達はわかりかねている村人達に言いました。
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