第四章 誓約の水精霊
第九話 剣
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震わせるものが怒りや悲しみ、愛や喜びでも何でもいいと……。
……なら。
竜巻による風が頬を嬲る。竜巻の向こうにいるだろうウェールズを見やる。……ウェールズを蘇らせ、操る者を思う……。
――――ふざけるな――――
砕かんばかりに歯を噛み締める。
士郎が握るデルフリンガーの柄が軋みを上げた。
「お、おいおいこりゃ……驚いた」
デルフリンガーが驚愕の声を上げる。
デルフリンガーは『ガンダールヴ』の剣だ。記憶はあやふやであるが、かつて『ガンダールヴ』に振るわれていた記憶が確かにある。そして、『ガンダールヴ』が剣を振るう時、左手に刻まれたルーンが輝けば輝くほど、その力が上がっていったのを覚えている。力を上げる要因は知っている。心の震えだ。心を震わせるのならば何であれ、『ガンダールヴ』の力は上がっていく。そして、心が強く震えれば震える程、左手のルーンは強く輝く。つまり、ルーンの輝きの強さで、心の震えの強弱、『ガンダールヴ』の力の強さが分かるのだ。
覚えている限り、前の『ガンダールヴ』が戦う時、ルーンは眩しい程ではないが、それなりの強さで光っていた。だが、今の相棒は違う。相棒が剣を振るう時、ルーンは微かにしか光らない。それは、常に冷静に戦っているとのことだが、しかし、つまるところ、『ガンダールヴ』の力を使っていないと言うことだ。
相棒は常にそうだ。フーケのゴーレムと戦った時も、アルビオンでワルドと戦った時も、ゼロ戦に乗りレコン・キスタと戦った時も……。相棒は『ガンダールヴ』の力を殆ど使わず戦っていた。
相棒は戦闘中、心と体を切り離して戦うタイプだと判断していた。だから、相棒が『ガンダールヴ』の力を本当に発揮することはないのではと思っていたのだが……。
「ハハハ……ありえねぇ」
「オオオオォォォォォォッッッ!!」
闇を切り裂くような輝きを見せる左手を添え、全力でデルフリンガーを振り下ろす。
音を越え、空を裂いたデルフリンガーは、巨大な竜巻すら一瞬二つに切り裂いた。ソニックウェーブがデルフリンガーに追いつくより先に、士郎はデルフリンガーを横に切り返し、元に戻る前の不安定な竜巻の横っ腹を吹き飛ばす。
「ラアッ!」
士郎の身体は一瞬も止まることなく動き続ける。その速度も尋常ではなく、周りからは士郎の身体ブレて見えるほどだ。士郎がデルフリンガーを振るう毎に、徐々に竜巻が縮んでいく。鼓膜を破るほどの轟音が鳴り響く。
敵も味方も関係無く、天を震わす轟音に顔を顰め、耳を塞いでいる。しかし、ただ一人の例外がいた。轟音の中、微かに混じる音は、詠唱を行うルイズの声。
一方的に士郎が竜巻を削っている様に
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