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剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
第九話 剣 
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せない。……人形と共に生きても……悲しいだけだ……みすみす不幸になる君を……放っておけない」
「シロウさん」

 すまなそうに目を伏せる士郎だが、その目は、硬い決意と深い悲しみを帯びている。優しさと悲しみ、怒り……様々な感情が見える士郎の姿を、アンリエッタは魅入られたように見つめ続けている。と、そこで、士郎とアンリエッタの間に割って入るように、ウェールズが身体を割り込ませた。

「困るなシロウ。君がそこを退いてくれないと言うのなら、強制的に退かすことになるよ」

 にこにこと笑いながら杖を向けるウェールズに、士郎も獰猛な笑みを向ける。

「上等だ。出来るものならやって見せろ」
「そうかい、それじゃ……」

 ウェールズが杖を振り、見えない風の刃を士郎に飛ばすのを合図に、ウェールズの後ろに待機していた死者の騎士団が、士郎に向かって杖を抜き走り出した。








 左右前後、上に時折下から、途切れなく飛んでくる魔法の雨を、士郎は右手に持つデルフリンガーで、時に切り裂き、時に叩き潰す。背後にいるルイズ達には、事前に守りを重点的にするよう指示を出している。時折ルイズとキュルケが前に出そうになるが、それをタバサが冷静に押し止めてくれる。
 最初はドットの小さな魔法で士郎を攻撃していたウェールズ達だったが、次第に大きな魔法を使うようになった。その理由は、魔法の雨をくぐり抜けた士郎が、確実に一人ずつ仕留めていったことから、魔力の消費を恐れていれば、全滅する危険が出てきたためだ。
 士郎は不死の騎士を十以上の部品に分割すると、キュルケに炎の玉で燃やし尽くすよう指示をだしたのだ。その結果、徐々にだが、不死の軍団は、数を減らしていった。
 このままならいけると士郎達が勢い付くが、それも、唐突に雨が振り始めるまでだった。
 ポツリポツリと降り出した雨は、一気に本降りになった。
 キュルケの炎で燃やし尽くせなくなった結果。士郎が十分割にした死体が、いつの間にか回復、戦線に戻り、戦いが膠着状態に陥っていく。
 徐々に戦況が覆り、焦る様子を見せるルイズ達に対し、アンリエッタの声が響く。

「もう、もう止めてください! シロウさん、あなたがいくら強くても、このままではあなたは死んでしまいます。この雨の中では、炎はその力を発揮できず、代わりにわたしの『水』は力を増します……だから、もう……」
「断る」

 震える杖を向けてくるアンリエッタに、シロウはデルフリンガーを肩に乗せ答える。その口調は今までの嵐のような戦いをくぐり抜けてなお、息を荒げることなく、いつもと変わらない。

「言っただろう。みすみす不幸になる人を……見捨てられるわけが無いッ!!」

 肩に担いだデルフリンガーを振り抜き、その切っ先をウェールズに向
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