第四章 誓約の水精霊
第九話 剣
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…トリステイン、王国、王女……アンリエッタは、水の精霊の御許で、誓約いたします……ウェールズさまを、永久に…………愛……することを」
かつてラグドリアン湖の畔で口にした誓約の言葉を、アンリエッタは一言一句正確に口にする。それを聞いたウェールズは、アンリエッタの体を抱きしめると、顔を近づけ耳元に囁きかける。
「君が女王に変わっただけで、それ以外のことは全く変わらないよ。君が僕を愛してくれて、僕が君を愛する……ほら、全く変わらない」
まるで甘い毒だ……耳元で囁かれる言葉の一つ一つに意識が奪われる。ああ、どれだけ夢に見ていたことだろう。こうやって抱きしめられ、愛を囁かれる……たったこれだけのことを……一体どれだけ……。
「君はその誓を信じ、僕を信じてくれればいいんだ。そうしたら、後は全部僕に任せてくれればいい」
ウェールズの言葉に、アンリエッタはただ黙って頷く。
心の奥で何かが声を上げているけれど、もう、何を言っているのかよく聞こえない。ただ、今はこの身に感じるウェールズの身体と、囁かれる優しい声に身を任せたい……ただそれだけを感じ……後は何も感じない……聞きたくない……知りた、く、な、い……。
「あそこだ」
唐突に士郎が指差した先は、闇に隠れ全く見えない。しかし、士郎の目にはハッキリと映っていた。
「どこ? 全然見えないわ」
「どこよ?」
「このまま真っ直ぐ進め……このままいけば、後三分程度で着く」
「え、本当?」
眉間に皺を寄せ、ギリリと睨み付ける士郎に、ルイズ達は不安そうな顔を向ける。
「俺が一人で――」
「ダメよ」
「嫌よ」
士郎の言葉を遮り、ルイズとキュルケが声を上げる。闇の先からルイズ達に顔を向ける士郎。士郎の前には、絶対に引かないと顔に書いているルイズとキュルケの顔があった。これは説得しても時間の無駄だなと判断した士郎は、顔を前に戻すと、一言だけルイズ達に投げかけた。
「無理はするな」
「……くそっ」
「そんな……」
「どうも全滅のようね」
「……」
風竜から降りた士郎達は、辺りを見渡して呟く。周りには賊を追っていたヒポグリフ隊と思われる死体が散らばっていた。眉を顰め、顔を俯かせるルイズ達。
「生き残りがいるはずだ」
生きているものがいないか、倒れている者達に近づこうとした瞬間、士郎に向かって風や氷、炎の魔法が飛んできた。いち早く気付いたタバサが、防御しようと呪文を唱える。
「タバサ、そのままルイズ達を守っていてくれ」
「……分かった」
四方八方から飛びかかって来る魔法をデルフリンガーで切り裂き、時に避ける士郎。ルイズとキュルケは
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