第四章 誓約の水精霊
第九話 剣
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見えるが、竜巻の手も士郎に届いていた。
竜巻に振るわれた水は、鉈以上の重さと剃刀以上の鋭さを持っていた。それが音速に迫る勢いで途切れなく迫ってくるのだ、士郎が無事でいられるはずがない。デルフリンガーを士郎が一振りする事に、竜巻はゆっくりと小さくなり、士郎の身体に傷が増える。腕に、胸に、顔に、身体中に傷がつく。
一分……?
五分……?
それとも十分?
士郎が竜巻に相対してからどれだけの時間がたったのだろうか?
今、アンリエッタ達の目の前で、士郎と竜巻との決着がつこうとしていた。
「オオオオオアアアァァァァァッ!!」
士郎の勝ちという決着で。
『解除』の魔法の詠唱を唱え終えたルイズの目の前で、あれ程巨大だった竜巻が吹き飛んだ。士郎が剣を振り抜く事に生じた、不可思議な轟音に負けない程の声で、士郎が雄叫びを上げる。それを合図にしたかのように、水の竜巻は細かな霧に姿を変え、空から降り注ぐ雨に交じり消えていく。
肩を上下に揺らしながらも、確と大地の上に立つ士郎の姿を確認したルイズは、誇らしげな笑みを士郎に向けると、人形のように突っ立ている不死の軍団……ウェールズ達に対し『解除』の魔法――『ディスペル・マジック』を放った。
士郎が水の竜巻を打ち消したことに、アンリエッタは余り驚きを感じていなかった。妙な納得も感じていた。士郎が竜巻を打ち消すと同時に、アンリエッタの中の何かも消えていくのを感じた。未だ霞がかった頭だが、何処かスッキリとした気分がする。
肩を上下に揺らし、汗と血が入り混じる姿でゆっくりと歩いてくる士郎に、アンリエッタは顔を俯かせる。
「怖く……ないので、すか」
「……怖くないといえば、嘘になるな」
ポツリと独り言の様に呟くアンリエッタの言葉に、士郎が応える。
「ウェール、ズ様についてい、けば、不幸になると、あなたは言い、ましたが……なぜ、あなたにそ、んなことが言えるので、すか……ついていかな、い方が不幸かもしれ、ないのに……」
ぼんやりとした瞳だが、強い意思を秘めた目で見上げ、息も絶え絶えにながらも訴えてくるアンリエッタ。足を止め、デルフリンガーを肩に担いだ士郎は、雨足が弱まる空を一度見上げると、目を細め、アンリエッタを見下ろす。見つめてくる士郎の瞳に、アンリエッタは何かに耐える様な、微かな苦しみが見えた気がした。
「そう、だな……そうかもしれない……」
「なら――」
「だが、そんな顔で言っても、説得力がないぞ」
「え」
士郎に指摘され、手で顔を触れるアンリエッタ。
「あ……ああ……わた、わたしは……」
頬に触れた指先に感じるのは、雨に濡
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