1話
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色々物入りなはずなのに」
ウースはすまなそうに話を続ける。先ほどの住居に住まわせてもらうのが、心苦しいようだ。
「た、対価は十二分に貰っているのでお気になさらず」
上擦るように声を張り上げて黒ウサギは答える。
「それでですね。是非ともわがコミュニティに入ってもらいたいのですが」
「まぁ、それは三日後にね」
彼女の誘いを、ウースは凪のように流していく。
「君たちが色々大変なのは理解したし、命を助けてもらった義理がある。だから、手助けはさせてもらう。だけど私も此方に着たばかりなんだ。もう少し、待って欲しい」
「・・・・・・了解です」
彼の答えに、黒ウサギは残念そうに頷いた。しかし、自身が急ぎすぎていたのを理解していたのだろう。彼女は申し訳なさそうに頭を下げた。
「すみません。此方も性急でした」
「いやいや、先ほど言ったとおり君達が大変なのは良くわかっているから、気にしなくていい」
ウースも困ったように、頬を掻いていた。
その性か。二人の間に、妙な空気が流れた。
その雰囲気を振り切るように、黒ウサギは立ち上がる。
「それでは! 我々の仲間とリーダーを紹介しましょう」
案内するようにドアの方へと足を向けた。ウースもバックと杖を持って彼女に続く。
(流石に黒ウサギ達の現状は誤魔化せません。ですが、旗と名の事は話していない。三日くらいならごまかせる筈です)
廊下に出て歩ている。
黒ウサギに案内されながらも、周りを観察していた。
例えば、立派な廊下で在りながら、何も芸術品が飾っていない事。所々埃が溜まっている事等々。
ローグとしての技術を学んだ彼にしてみれば、色々解かる事があった。
(廊下の長さや階段からして、豪商か貴族の屋敷っぽいな。だが、掃除が行き届いていない。やはり結構大変な状況なようだ)
それなり歩いて階段もありながら彼は、黒ウサギが住む場所の事を考えていた。
(だが彼女もまだ何か隠し事をしているようだ。これで色々と不相応なリーダーだった場合…………)
思考を巡らせながら屋敷の中を歩いていく。二人はずっと黙ったまま歩いている。
黒ウサギもウースに、話しかけられる状況ではなかった。
(できれば彼には仲間になってもらいたいものです。先から感じる力強さ。それに、黒ウサギ達の現状を憂いてくれているようですし)
彼女も彼女で色々考える事が多いようだ。
途中大きな木製の扉の前で、黒ウサギは立ち止まる。
「ジン坊っちゃん。昨日のエルフを連れてきましたよ」
「うん。入って、黒ウサギ」
扉から聞こえた幼い響き。それを聞いて、ウースのとがった耳がピクリと動いた。
扉を開いて二人は中に入っていく。
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