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第一章
謎の犯人
作家の安田雅美のところにだ。自分の作品のドラマ化の話が来た。
「あなたも出るのね」
「ああ、探偵役でな」
夫の安田徹がその通りだと述べた。それは推理もので探偵が殺人事件の謎を解いていくというものだ。その作品がドラマになるというのだ。
「主役だけれどな」
「夫が妻の作品に主演ね」
「別にコネじゃないからな」
「ええ、それはね」
雅美もわかることだった。何しろ原作者である彼女に知らされたのは今だからだ。
そしてだ。夫は妻にまた言ってきた。
「共演者は若松千賀子に伊藤義重だよ」
「豪華ね」
どちらもだ。人気のある女優と俳優である。雅美はドラマはあまり観ないがその彼女でも知っている。それ程の二人だった。
「それでプロデューサーは古田明でな」
「敏腕らしいわね」
「監督は尾花彰彦、脚本は荒木信也なんだ」
「そっちも凄いわね」
「ああ、収録の見学に来るか?」
「そうさせてもらうわ」
雅美は笑顔で夫に応えた。そうして夫に案内されて見学に行くとだ。
休憩時間だった。一人の美人が席に座って煙草をすぱすぱとやっていた。そうしてそのうえで周囲に笑顔で話していた。
「やっぱり。仕事の合間の一服っていいわよね」
「あの、若松さん今日何本目ですか?」
「もう一箱空けてますよね」
「二箱よ」
もう一箱多かった。周囲の言葉にこう返す。
「一日五箱。吸ってるわよ」
「好きですねえ、本当に」
「煙草が」
「煙草がなくて何の人生なのよ」
すぱすぱと吸い続けながらの言葉だ。それを止めることはない。
「だからよ」
「まあいいですけれどね」
「煙草位」
周囲も呆れているがこう言うに止めた。そしてだ。
雅美はその彼女を見ながらだ。唖然としながら徹に問うた。
「あれが若松千賀子?」
「そうだよ。あの人がね」
「人柄はいいって聞いたけれど」
「実際にとてもいい娘だよ」
彼の方が年上である。だからこう言ったのだ。
「嫌いな人はいないわね」
「けれど」
それでもだとだ。雅美はその唖然とした顔でまた言った。
「何、あの煙草の吸い方」
「ああ、あの娘ヘビースモーカーなんだ」
そうだというのだ。
「一日五箱吸うんだ」
「滅茶苦茶なヘビースモーカーね」
「あれさえなければなあ」
徹は苦笑いで言う。
「完璧なんだけれどな」
「ううん、幾ら何でもあれば」
煙草を吸わない雅美から見れば呆れる他ないことだった。そしてだ。
昼はだ。そのプロデューサーの古田と食事を摂った。彼は力士の如き巨漢であった。
二人はレストランで古田の招待を受けて昼食と摂った。その彼の食事は。
分厚いステーキをだ。何枚も何枚も食
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