第2話「なめらかなポリゴンは人の心もなめらかにする」
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空が夕焼け色に染まり始めたかぶき町。
『スナックお登勢』の戸には『本日休業』の看板が掛けられていた。
しかし店内は点灯しており、さらに風船や色とりどりの電球が華やかに飾られていた。
「たま、遅いアルな〜」
カラフルに彩られたお店の中で、神楽はウキウキしながら本日の主役を待っていた。
「お登勢さんも粋なことしますね」
装飾を終えた新八も嬉しそうな表情を浮かべる。
機械家政婦・たまの耳の裏には型番と共に製造日が刻まれており、それが今日であった。
そのことを源外から聞いたお登勢は、毎日お店に尽力している従業員のために誕生日会を企画したのだ。新八と神楽を誘い、途中で偶然店に入って来た銀時も手伝わせパーティーの準備を今終えたところである。
あとは双葉と一緒に帰ってくるたまを待つだけだ。
「あの子は働き過ぎだからね。何だか最近調子もおかしいみたいだし、一つパァと盛り上げてやろうと思ったのさ」
カウンターで煙草を吸うお登勢がしみじみと語る。
「誕生日はソイツの何より大切な記念日さ。祝ってあげなきゃ野暮ってもんだろ」
「人生の抜け殻みたいなシワくちゃババァが学生みてェな真似するってマジキモいな」
「うるさいね。年がら年中セミの抜け殻みたいなアンタに言われたくないよ」
お登勢は白けた目でぼやく銀時の首を締めたくなった。しかしここで暴れたらせっかくの装飾が壊れてしまう。誕生日を迎えるたまのためにも、鋭く睨む程度にしておく。
すると夕暮れに照らされた店の戸に、二つの人影が浮かび上がる。
「あ、戻って来たみたいですよ」
新八の声を合図にお登勢や神楽たちは戸の前に並び、面倒くさそうな顔をしながら銀時も一緒に立って出迎える。
本日のパーティーの主役を。
そして、店の戸がガラガラと音を立てて開かれた。
「たま、おたんじょ――」
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パーティーの主役は、カクカクペシャンコだった。
「たまァァァァァァ!?」
「たまさんん!なんでドット絵になってんの?なんで誕生日に生まれ変わってんのォ!?」
双葉と並ぶたまは二等身まで背がぐっと縮んでいるどころか、容姿も初期のRPGのような『ドット絵』に変化していた。
驚かすつもりが逆に度肝を抜かれ新八たちは、一気にパニックになる。
神楽が尖がり目になって速攻で双葉に突っかかった。
「おいピザ女、オマエたまに何したアルカ!」
「私は何もしていない。気づいたらこうなっていた」
「うそアル!絶対何かしたに決まってるネ!」
「嘘ではない。私は嘘が嫌いだ」
「ああごめんよ、たま!!私が無理にお前を働かせ続けたばかりに故障しちまったんだね!」
ドット絵に変わり果てたたまに泣きつくお登勢の涙声が店内に広がる。
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