ビギンズナイト
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自分の左手で相手の左腕と左足を寄せて掴んで落とさないようにする。試しにやってみろ」
「なるほど。じゃあ……なのは、今から持ち上げるけど良いかな?」
「うん。こちらこそ迷惑かけてごめんなさい、ジャンゴさん」
なのはの申し訳ない気持ちを察したジャンゴは「気にしないで」と微笑む。そんな彼女を騎士が姫を扱うみたいに優しく背負いあげ……義手の硬質的な感触にジャンゴは複雑な表情を浮かべる。
「気にしないで。この腕は生き残る代償になっただけだから」
「そうなんだ……。何があったのかは、落ち着いた時にでも聞くよ」
「うん、お願い」
彼女の小さな身体に一体どれほどの苦難が刻まれているのか、それを考えて哀しい気分になりながらも、ジャンゴはゆっくりと病院から脱出するために歩き出した。
それは初めて、太陽の戦士が次元世界に踏み出した瞬間でもあった。
新暦67年9月1日、0時46分。
なのはを背負いながら、ジャンゴは病院の関係者だったグールがはびこる屋内を進む。かつてギルドの依頼で行った脱出任務の経験を活かし、彼は敵に見つからない様にしゃがんだり、別の場所で壁叩きや太陽銃ビートマニアによる陽動を行う事で、巡回したり確認に向かった敵の視線をうまく掻い潜っていく。
「流石だな、ジャンゴ。ブランクがあるとは思えん」
「最近は殲滅任務ばっかりだったからね。たまには隠れるのもいいさ」
曲がり角から先の様子を伺い、敵の姿が無い事でジャンゴは慎重に移動していく。なのはが言うには目の前に見える扉はエレベーターであるため、急いで脱出する自分達には好都合だった。
「ところでさ、ここって病院なんだよね?」
「うん、そのはずだよ」
「じゃあどうして窓が無いの? 設備や建築には高い技術が使われてるのに、外の光が届かない造りは病院としては何かおかしくないかな?」
「言われてみればそうかもしれない……でも私にはわからないよ」
「だよね……。ま、外に出れば何かしら掴めると思うよ。これからあのエレベーターで一階に行けば―――ッ!?」
言葉の途中でいきなりそのエレベーターから炎があふれ出し、異変を感じたジャンゴはすぐに物陰に隠れて警戒する。心臓の鼓動が数回鳴った次の瞬間、着いた事を知らせる音と同時にいきなりエレベーターが爆発した。隠れていたおかげで爆風に襲われずに済んだものの、地上へ行くルートが目の前で木端微塵にされた事と、中から現れた異質な存在を目の当たりにした事で彼らに否応なしに緊張が走る。
「ふむ……ワイヤーが我が紅蓮に耐えられなかったか。やはり人間どもの作る道具は脆弱でいかんな」
炎を思わせる意匠が凝らされた黒いマントで体を覆い、赤髪でいかつい顔立ち、そして人間とは思えない青色の肌。
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