ビギンズナイト
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動かす事は出来ない。彼女は……左腕を喪失していたのだ。
「ッ!? はぁはぁ……ッ! うぁッッ!!!」
「い、いかん! ナース、鎮静剤! 早く!」
「はい!!」
「大丈夫、落ち着いて! そう……大丈夫。心をそ〜っと、静かに落ち着けて……休んで……」
鎮静剤の効果によってなのはは徐々に意識が遠のいていき、そのまま眠りに着いた。この日は、それで終わりだった。
新暦67年9月1日、0時12分。
「気分はどうですか?」
「まぁまぁ、です……」
「そうですか。新しい点滴を持ってきますので、少しだけ待っててくださいね」
覚醒から数日経った今日、いつものナースが去った後、なのははおぼろげな眼で虚空を見つめていた。徐に左手を見ると、そこには黄土色の取っ手みたいな義手が緑色の病人服の袖から覗いていた。身体の重心のバランスを整えるという意味もあって付けられたのだが、今の所動かす場面も無いので特に不便は無かった。
先日、主治医が言った通り、記憶は少しだけだが蘇りつつある。しかし、これから何をすれば良いのか、求めるものが何なのか、何のために生きるのか、彼女は答えを見つけられなかった。ただぼやけた頭で、“考える事”を考え続けていた。ただ……身を挺して自分を守った友に抱く罪悪感が、時間を経るごとに大きくなっていた。
だが今のなのはに何かする術は無い。だからこそ、友に助けられた身体を治す事に専念している。そんな日々を送っていたある日、ふと廊下の方から慌ただしい声が聞こえてきた。
「どうしたんですか、主治医。そんなに焦って? これから新しい点滴を交換しなければならないんですけど……」
「マズい事になった。彼女をここに匿っていた事が、例の連中に漏れてしまった! 急がないと……患者が危険だ。すぐに搬送の用意を……それも並の人間では駄目だ。あの連中と戦える力を持っていなければ、彼女を守れない!」
「しかし彼らに頼ろうにも事情を説明する時間もありませんし、呼ぼうにも今すぐは無理です。一体どうしたら……」
「方法は任せる、とにかく何とかしてくれ。私は彼女に事情を伝える」
「わ、わかりました。では後ほど……」
主治医に言われて困惑しながらナースが走っていき、焦燥感を隠し切れないまま主治医が彼女の下へやってくる。
「今の話は……?」
「聞こえていましたか。察しの通り、実はまだ……あなたの命は狙われているのです。世界の闇に潜む者達、あなたの生存を望まない者達から、今も尚……」
「どうして……私が?」
「連中があなたを狙う理由は後で説明します。とにかくこのままここに居ては危険です。すぐに逃げなければ、生き残る事は出来ないのです。そこで、あなたはまだ自力
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