卒業式
12 本当の帰還
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
卒業式が閉式を迎え、それぞれ親や仲のいい元学友と共に、正門から去っていく。
これで有宇たちの高校生活は全て終業となる。
記憶がない有宇には思い出など何も無い。
だが、短くはない年月を通ったこの学校に通った日々は心の底で生き続けている。
そう思っただけで何故だか鼻先がツンとして校舎の映るその景色が滲んだ。
そしてその雫と共に有宇の中から確かに何かが抜け落ちていくような感覚があった。
「あ…ふっ…フハハハ。そうか…そうだったのか!!」
回れ右をして生徒会室へ向けて駆け出すと同時にケータイを乱暴に引っ張り出す。
それを震える指先で操作して、生徒会メンバー全員にコールした。
十数分後。
まだ学校に残っていたいつもの生徒会メンバーが数分おきに集まってきた。
「皆に聞いてほしいことがあるんだ」
学校周辺のマップが乗っている大きなテーブルに手をつき、体重を預けている有宇が身を乗り出してニヤケる。
「いきなりなんスか?わざわざ呼び出しまでして」
彼の生き生きとした行動と表情に疑問を感じたらしい奈緒が微妙な表情で有宇を見つめる。
「確かに、あまり今の乙坂さんらしくないといえばそうですね」
高城が眼鏡の位置を右手で整えながら微笑を浮かべた。
コイツは頭良さそうに見えて眼鏡はダテのバカだからなぁ。
などと有宇は考えていたが声には出さない。
「うーんと、何か楽しいことでもありましたか!それとも嬉しいこと?あっ…!!」
黒羽が可愛らしく頬に人差し指をあてて首を傾げた後、何かに気付いたように一歩乗り出した。
「まさか…」
高城の鼻の穴が広がり、息が荒くなる。
「幸せに♪嬉しいな♪ハッピーになれのおまじない♪」
「出たァアアア!!柚咲りんのおまじないシリーズNo.43!!ハッピーになれのおまじない!!!柚咲りん自身が占いランキング最下位の時に自慰目的で編み出したポジティブメッセージキタァアア ア!!」
「引くな!!」
「ぐはぁああああああああ」
ボキッ!!
なんかボキッ!!って言ったぞ。
黒羽のおまじないシリーズの登場に興奮する高城に突っ込んで蹴っ飛ばす奈緒(蹴飛ばされたのはおそらく自慰などという隠語を用いたからだろう)。
ほんと…
「いつも通りだな、お前ら」
有宇が感慨に耽っていると、奈緒が軌道修正する。
「んで、話ってなんスか?」
「あ、ああ。そうだったな」
「おっと、これはこれは。邪魔をしてしまったようですね。どうぞ続きを」
いつの間にか起き上がっていた高城がズレた眼鏡を直している。
腰をさすっているが大丈夫なのだろうか。
「あ、はわわわ!スミマセン!続きを
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ