10 卒業式はこれから
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『…であるからして、いつまたこの地球にシャーロット彗星がやって来るのか分からないので、ワクチンの摂取が必要というワケなのです!』
一斉に拍手が沸き起こる。
マイクの前に立つ歩未の瞳は天ノ川よりも輝いていて、見つめる人間の心を惹いていく。
もちろんその心は人それぞれなるが。
『て、アレ?有宇お兄ちゃん?…おっと』
電源が入ったままのマイクに声を入れてしまい慌ててスイッチをOFFにする。
歩未の視線の先は空っぽの空間で、そこに兄の姿は見えなかった。
一方…
有宇は屋上でベンチに寝転び、青空を見上げていた。
「こんなところに居たんですね。何も連絡がないから探しましたよぉ」
「こっちに来てごらん」
背中を起こす有宇が端に詰めると、彼女はタタッと軽快な靴の音を刻んでスキップし、恋人の隣にちょこんと座った。
「空が晴れてる」
「はい。快晴ですね」
まだ三月の頭という肌寒い頃合いにも関わらず、地平線上に広がる空は青く、雲一つ見当たらない、真夏を思わせる程によく晴れていた。
「この空ってどこまで続いてるのかな」
惚けている有宇の横顔を見つめてニヤケる奈緒は人差し指をつきだしてゆったりとスイングする。
「まぁた、そんなロマンチストなことをよく恥ずかしげもなく言えますね」
「ぼ、僕は特に何も考えないで言ったんだが…」
そんな慌てている有宇を見て奈緒はほんのわずか一瞬だけ、うっとりとした表情を見せた。
「私達の今いるこの空間の私と有宇くんの背中に繋がってるんだと思います。地球は丸いですから」
「そうだね、そういえば宇宙から見た地球は青くて球だったような気がするよ」
それを聞いた奈緒は思わず飛び退き、目を見開く。
「有宇くん、宇宙行ったことことあるんスか!?すっげーな」
「あ、うん。うん?いや、ないのか?」
「は?」
奈緒が首を傾げる恋人をしげしげと眺める。
「ごめん。記憶が混濁してて思い出せない」
「そうですか…まぁ、ぶっちゃけ過去のことなんてどうでもいいんです」
「え?」
「たとえ記憶がなくても、あなたはあなたですから」
「僕は…僕」
「はい。あなたは私の元クラスメイトで、もうすぐ終わる生徒会役員の仲間で、そして私の愛しい恋人です。それだけじゃ足りないですか?」
「いいや、充分だよ。何も思い出せないけど、奈緒がいてくれればいい。心の底からそう思う」
「ありがとう…ございます」
後半、声が掠れてしまった奈緒は、何故だか最近涙もろいなと感じていた。
実際には有宇が病院で起きた日以来、泣いた記憶はないはずなのに、なぜか、何故だか…。
それは数多に生成された時間平
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