卒業式
02 策士
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この男は仲間なのか?
そうだ、仲間だ。
僕はコイツを知っている。
男の名前は…
「熊耳…なのか?」
「ああ。お前が殺した『あの』熊耳さ」
身を引く僕に更に詰め寄る男の言葉は、口から溢れるようにして漏れ出す血液によって濁った物となっていた。
「助けて欲しかったのです。有宇お兄ちゃん。なんで助けてもらえなかったのでしょうか」
嘘だろ…歩未…
横たわっていた少女が顔を上げると、その顔面はひしゃげて血みどろとなり、発する言葉こそ歩未そのものだが、体の前半分はぐちゃぐちゃで原型を成していない。
「そんなわけない…だって、お前は今も元気に生きていて、さっきだって隣に…あれ…」
記憶が曖昧になっている。
さっき、僕は卒業式に…参加してたのか?
校舎が崩壊し、落ちていく歩未。
瓦礫に潰されぐちゃぐちゃになったその体を、僕が見たのかどうかすら分からないのに覚えている。
何もかも分からなくなってきた。
何が本当の記憶で、何が偽りの記憶なのか。
「あ…う、うああああああああああああああああ」
再び肉体から閃光が眩く輝く。
だが…
「うああああ…、はぁ…はぁ…。あれ…」
叫んで興奮から覚めることで異変に気付くことができた。
「崩壊の能力が…」
『当たり前さ。ここは私の世界。君が干渉することなど出来はしないのさ』
不意に声がする。
熊耳と歩未はいつの間にか消えていて、その声の元ではない。
空から降り注ぐように響くその声は続ける。
『どうだね?親しい人間から恨まれるその気分は』
「こんなところに僕を閉じ込めてどうする。何が目的だ」
狂う半規管の平衡感覚がぐるりぐるりと視界を回らせる。
そこからくる嘔吐感を耐えながら声に問うた。
声曰く
『私個人の目的はとうに忘れてしまったよ。しかし、奴等の目的は君の懐柔らしくてね。殺してもサンプルは得られるそうだが、能力自体は死んだらなくなってしまうそうじゃないか。なので私がこうやって時間をかけて君の精神を壊し、そこから我々への忠誠を誓ってもらえるよう教育を施す予定になっている』
「目的は僕の持つ全能力ということか…」
胸にこみ上げる熱いものを今は抑える。何故なら、分からないことがもう一つだけあるからだ。
「僕は世界中の能力を、発生前の段階であるキャリアも含めて全て奪った。なのに何故、お前はこんな世界を創る能力を持っているんだ」
『ふっ、ふははははははは』
今にも嘔吐しそうな表情の僕を見てか、その声は高らかに笑い、そしてそれに返じる。
『これからてなづけられるお前には言っても仕方ないことだ。だが、私も人に話す機会を求めていたと
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