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なかったことに
1部分:第一章
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二人がだ。警官達にそれぞれ名乗った。
「本郷忠です」
「役清明です」
「お話は聞いています」
 アメリカの警官のだ。ダークブルーで筋肉質の身体によく似合う制服を着た恰幅のいい浅黒い肌の男が二人に対して挨拶をした。
 場所は今は車の中だ。大きく頑丈そうな黒い車の中でだ。警官は車を運転しながら二人に話した。
「マクガイヤ警部です」
「警部さんですか」
「はい、そうです」
 彼は本郷に対しても答えた。
「どうぞ宜しく御願いします」
「話は御聞きしています」
 今度は役が話す。二人はそれぞれ車の後部座席にいる。そこから警部に話しているのだ。
「ベネットちゃんですね」
「そうです。あの娘のことで」
「日本でも噂になっています」
 そうだとだ。役は警部に話すのだった。
 警部が見る後部座席の二人には表情がない。その無表情さが警部には何かを考えているように見えた。それが妙に頼もしくもあった。
「殺人事件ではないかと」
「ああ、日本でもですか」
「そうなんですよ。雑誌でも載ってますよ」
 本郷もここで警部に話す。

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