卒業式
卒業式
01 特異点
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、ある特定の人間とは…』
歩未の口が滑らかに動いていく。
それを言ってどうする、と口を開きかけたがもう遅かった。
奈緒も何が起こっているのか理解出来ておらず、硬直しているのが視界の隅に映った。
『特殊能力者、アンユージュアルアビリィティプレイヤーの存在です』
歩未の言葉にざわついていた館内が静まり返る。
そして僕と歩未を生徒達が交互に見ているのが頭を抱え、俯いていても分かる。
「歩未は何がしたいんだ…仕方ない」
僕はそう呟いて一つ深呼吸してから拳を握り、己の体を宙へと浮かすイメージをした。
イマジネーション通り体はまっすぐふわりと舞い上がり、僕より後ろに座っている生徒や保護者の視線が釘付けになっているの痛いほど感じる。
その中の一人が声を上げて驚くと、僕より前に座る生徒たちも気付いて僕を見上げる。
「有宇が、飛んでる…」
「ワイヤーの仕掛けとか無かったよね!?」
我がクラスメイトの驚愕する声が耳に届く。
僕は歩未のもとへとゆっくり飛び、斜め四十五度た降下しながら歩未を訝しむ(いぶかしむ)。
「何がしたいのかな」
『来てくれるって思ってたからです!』
「そうじゃなくて…」
『これから特殊能力が実在するということを兄に証明してもらいます』
「な、何言ってるのさ…って…」
僕に重ねて言う歩未の手は少しだけ震えていた。
「歩未…?」
「少し付き合って欲しいのです」
冷や汗を流しながらにへらと笑う歩未は、普段の歩未を装うようで、それは僕が歩未を信じるのには充分だった。
「分かった」
そう言うと歩未は頷き、再びマイクに向き直る。
『先程の飛行能力に加え、兄はあらゆる特殊能力をその体に宿しています』
歩未は一端言葉を切り大きく息を吸う。
生徒やその保護者達は、何を見せられるのかという考えに唖然として口を大きく開いている者、ワクワクして目を輝かせている者、式の頭から寝ている者など様々である。
『例えば念動力』
そう言って一歩下がる歩未は僕にウインクを飛ばす。
これが能力を使えという合図なのだろう。
それに従って僕は念じる。
まずはこの教卓台を僕の頭上辺りに持ち上げると、その瞬間に「おおー!」と歓声が上がる。
そしてそれを元の位置に下ろすと、いつの間にかマイクを教卓台から奪っていた歩未が嬉しそうに声を張る。
「どなたか信じられない方はいませんか?
兄にその人を空中まで持ち上げて頂こうと思うのですが」
全員が好奇心でウズウズしているのを感じるが、恐怖もあってか、ウチのクラスの連中も合わせて十数人程が挙手している。
またウインクをする歩未。
僕は深く溜め息を
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