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ホウセンカのキオク
第1話 〜新シイ生活〜
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重くなった。

教室に入ると既に約8割の生徒が登校してきていた。
その全員が背筋を伸ばし座っている。
やる気に満ち溢れた目である。
その中に一人、重いオーラを放って自席に向かう。
まだ緊張しているのか静かだ。
この初々しさも来月には消えているのだろう。
その頃にはこのやる気も失せていることだろう。
全員が着席したところで先生が入ってくる。
どうやらこのクラスの担任らしい。
前髪が少しお亡くなりになった優しそうなおじいちゃんだ。
「体育館に移動するので出席番号順に並んでください。」
ただし結構声が小さい。
優しすぎて怒れないタイプなのか。
それとも自己主張が苦手なタイプなのか。
まあどんなタイプにしろ教師はあまり好かない。
多少尊敬する人はいるものの、昔の偏見からかどうしても好きになれない。
まあ昔に比べればまだ良くなったものだが。
廊下の窓からは雲の切れ目から少し青空が顔を覗かせていた。

入学式が終わって教室に戻ると数名が話し始めた。
少し緊張が溶けたのかその範囲は徐々に広がっていっている。
無論僕はその輪の中に入らなかった。
なぜと聞かれれば僕はアイソレーショニスト(孤立主義)だからと答えるだろう。
人との必要以上の接触はできるだけ避けたいのだ。
人に夢はみない。ずっと前にそう決めた。
人は第一印象が大事だというけれど、結局のところ大事なのは本当の顔がどうかである。
いくら最初の自己紹介で取り繕ってもその人の根本的な部分はそのままなのだ。
人を第一印象で決めると大抵失敗する。
そうこうしているうちに先生が入ってきた。
教卓の前に立つとさっきまで騒がしかった教室が急に静かになった。
「はい。じゃあみなさん自己紹介。」
待て先生。さっき自己紹介の無意味さについて語ったばかりだろうと心の中で突っ込む。
「〇〇中学から来ました阿部です。趣味は…」
そして律儀に自己を紹介する。
本当に嫌いだ。自己紹介は嫌いだ。
さっきも言ったがそれだけで何がわかる。
趣味や特技どころか名前さえ覚えられない。
まあ覚える気など最初からないのだけれど。
「じゃあ次……伊藤。」
そう。クラスに干渉する気など全くないのだ。
僕が嫌いなのは学校のクラスという集団だ。
自分の嫌いなものに当たっていきたくない。
いや、自己紹介も嫌いなのだけど。
「じゃあ次……としがみ?」
「としかみですね。」
いつの間にか自分の番だったらしい。
自己紹介がなぜ嫌いか。
上で色々言ったがまず聞くのがめんどくさい。
そしてもう一つは……
「年神 道隆です。趣味や特技は……ありません。」
自分についてあまり語りたくない。

「ただいまー。」
「おかえりー。」
家に帰ると謎の開放感があった。
何かに束縛さ
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