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この異世界に統一神話を ─神話マニアが異世界に飛んだ結果─
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 相同伝承。

 それは、神話や伝説どうしに存在する、似たような伝承の事だ。

 規模が大きい、つまり殆どの神話で共通するものでは、人類を滅ぼし尽くす大洪水の話だとか、冥界に妻を救いにいく英雄の話だとか、太陽神、あるいは豊穣神が死んだり引きこもニートになったりで冬や日蝕が訪れるとか。

 小さい、つまりいくつかの神話で共通するだけのものなら、湖から聖剣を抜いた常勝の王の物語や、転生する世界の物語だろうか。

 そんな中で。

 俺は、地球の神話と異世界の神話に、その相同伝承を見つけてしまった。

「……その"ケラウネイオス"は、ガルシェ神話の主神だろう?」
「……!」

 図星(ビンゴ)か。
 俺が告げると、シェラは大きく目を見開いた。
「彼は空を支配する神だ。おそらくは海と冥界を支配する兄弟がいて、正妻は愛と結婚を司る、自らの姉だろうな」
「……どうして、わかったの?」

 シェラが俺に問う。この世界の神話など何一つ知らないはずの俺が、真実を口にしたのが不思議なのだろう。

 だが、最初の質問が正解だった時点で、俺の考えがほぼ正しいのは証明された。

「多分、父親が王位簒奪を防ぐために子供たちを食った時、母に助けられて一人だけ難を逃れたんだろう?」
「うん……ガルシェ神話だと、そうなってる」

 ほら、正しい。

「細部までは俺もわからん。奴には多分、無数の愛人がいるだろうし、そのメンバーは俺が想像しているのとは違うと思う。当然歴史が違うわけだし、象徴しているものも変わるだろうからな」
「……!」

 再び驚くシェラ。ここまで来れば、あとは真実を告げるだけ。

雷霆(ケラウノス)の存在。ガルシェの主神、そして『石榑に救われた神』と来れば、もう結果は見えている」

 俺は、己の得た『成果』を、シェラに披露した。

「──"ケラウネイオス"は、【ゼウス】の共通神格だ」

 ──解析完了。"ケラウネイオス"は、統一神話に組み込まれた。

「凄い……それが、『統一神話』の考え方?」
「ああ。一つ似たような所があれば、他に似たような所がないか探す。家族構成まで似通ったら、殆どの共通と言っても良いだろう。
 まぁ俺も、まさか共通どころか、殆ど同一だとは思わなかったが……」

 ガルシェ神話は、ほぼギリシア神話と同一の神話なのだろう。何度も言うが、勿論細部は異なるだろう。だが、ガルシェが西洋の島国であることを考えれば、立地的にもギリシアと一致する。

 そして──きっと、こんな風に、世界中の神話が、地球の神話と似ているのだ。これは凄いことだ。神の存在が証明されていて、なおかつ勢力や大陸の形が違っても、人々は住んでいるところに応じて同じような歴史をたどり、同じような神話を産み
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