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この異世界に統一神話を ─神話マニアが異世界に飛んだ結果─
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異世界転移、か。
生まれ故郷の星とは全く違う世界へと、なんらかの方法で送り込まれる、創作物によくある展開だ。俺はわりとサブカルチャーも嗜んだので、そういう類いの物語も何度か読んだ。まさか自分で体験することになるとは。
俺の専門ジャンルからすれば、竹取り物語とか近いんじゃないか。あれはSFの様な気がするが。異世界転移というより宇宙旅行だし。
創作神話でしかないが、コズミック・ホラーも似たような類いかも知れない。あれは向こうから来る方だが……。
ただ、異世界転移に似たような現象なら知っている。
『神隠し』だ。日本だけでなく、様々な国で見られる、まるで神に拐われたかのようにある日突然姿を消してしまう現象。それに近いのかもしれない。
ともかく、俺は異世界転移を果たしてしまったらしい。それも何故か、俺の部屋ごと。確かめてみたのだが、この書斎以外の部屋は転移してきていないらしく、奥のドアを開いても、その先には岩の壁しか無かった。
唯一、入り口のドアだけが外と繋がっており、そこはどうやら坑道になっているらしい。そこからやって来た少女──シェラが、その生き証人だ。
「そういえば、シェラはどうしてここに来たんだ?」
素朴な疑問。この部屋に到達した理由ではない。それなら先程聞いた。ガーゴイルに襲われて、だそうな。異世界ならあり得る話なのだろうな。魔法があるらしいし。
シェラの言葉によれば、今俺の部屋があるのは『ガルシェ都市国家連合』、という、ギリシアっぽい名前の国の領内にある無人島だ。そんな無人島に、何の故にシェラはやって来たのだろうか。
シェラは暫し黙考すると、無表情のまま、その問いに答えた。
「……遺跡の発掘に来た」
「ほう。一人でか?」
「そう。発掘魔法のおかげ」
遺跡か。たった一人で発掘にいく等とは、地球じゃ危なすぎて不可能だが、その発掘魔法とやらはそれを可能にするのだろう。便利だな魔法。
「発掘魔法は、私の父が体系付けた」
「へぇ、凄いんだな、シェラの親父さんは」
素直に称賛する。地球でも、新しい理論やら研究の体系付けを成した人は偉大だ。俺があまりそう言うのと関わってこなかった、というのもあるが、そういった研究者達は素直に尊敬に値するだろう。
「……うん」
その言葉を聞いて、シェラは、少し頬を緩めた。父親の功績だ。誉められたら嬉しいのだろう。うーん、以外と初々しい反応?誉められ慣れてるかと思ったのだが。
「それで、親父さんは魔法学者、とかだったのか?」
「違う。お父さんも、私も、『
探索者
(
シーカー
)
』」
「シーカー? なんだそりゃ」
「……コウガの世界には、ない?」
「無い。少なくとも俺のいた国ではね。どんな職業なんだ?」
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