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この異世界に統一神話を ─神話マニアが異世界に飛んだ結果─
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、この世界。ギリシア……じゃなくてガルシェがあるから、グノーシス主義もあるのかと思ってた」

 アルコーン。それはグノーシス主義に登場する、『造物主』の事だ。
 グノーシス主義は性悪説を基盤とした、キリスト教の異説だ。唯一神(YHVH)…ここでは便宜的にヤハウェと読む事にする…が、六日間で世界を創造し、七日目に休んだという、旧約聖書の『創世記』。

 しかし完璧に創造されたはずの世界なのに、人類(アダムとイヴ)(シン)を犯したし、それ以前に悪逆をそそのかした蛇がいた。

 世界には悪と罪が溢れている。何故なのか。

 グノーシス主義者達は、「そもそも旧約聖書のヤハウェは偽物なのではないか」と考えるようになった。本物のヤハウェ──完全なる精神体である真神(アイオーン)は世界の外側に追いやられ、世界を偽の神たるアルコーンが支配している。物質世界を創造したのはアルコーンであるから、物質である我々の肉体には初めから原(シン)がある──

「……一神教が、コウガの言うほど浸透もしてないし、迫害もされなかったせいだと思う」
「なるほどなぁ、だからこの世界のグノーシス主義も廃れた、と」

 グノーシス主義が発達したのはキリスト教が広がり、しかしローマ帝国によって迫害を受けていた時代、2世紀から3世紀のころだと言われいる。一神教が地球ほど迫害されなかったのなら、グノーシス主義は発達しないのかも知れない。もしくは、廃れてしまったのか。

 それに。

「神の実在が、証明されてるから。最後の神は、百年前までは地上の何処にでもいたし……今でも、バヴ=イルや黄金郷(バビロニア)には神様がいるって言われてる」
「ほーう。なら神話の形も少し違ってくるのかもな」

 神が実在する世界、か。魔法が存在する異世界なら当然か、と思わなくもないが、凄いなそれは。
 神話の通りに歴史が進んでいるのかもしれない。となると、本格的にその『始まりの神話』が人類誕生の歴史に繋がるわけだ。

「あれ? となると一神教の主張はどうなるんだ? ガチで神様いるんだろ?」
「一神教では、他の神々はあくまで精霊で、本物の神は一柱しかいない、っていう考え方みたい。『始まりの神話』も、自分達の聖典のオリジナルなんだろう、って……」
「なるほどなぁ」

 心が強いなぁ、一神教は。多神教に対抗する教えだから、当然っちゃ当然か。

 でも、多神教が証明された世界なら、あまり力を持てないのも確かなんだろうな。

「グノーシス主義が無いなら、アルコーン、っていう用語がなくても当然か……って、そもそもここは異世界だもんな。なんとなく話が通じるから違和感無かったけど……同じ神話じゃないだろうし。
 分かんないだろ、雷霆(ケラウノス)なんて言われても」

 
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