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この異世界に統一神話を ─神話マニアが異世界に飛んだ結果─
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魔法」
「え?」
「私達探索者は、神話魔法を求めている。神話魔法は、伝承の力で人々を助ける魔法」

 説明によれば、神話魔法は伝説や神話の英雄、現象を一部再現することで、人々の生活に、失われた神代を顕現させる術だそうな。

 例えば人の手では絶対に動かせない大岩を、神代の英雄の力で破壊する。
 例えば今の技術では救えぬ人を、神代の神医の秘術で救済する。

 それが神話魔法。探索者が存在する理由。神話魔法は、基盤となる神話が発掘され、人々の目に晒されないと誕生しない。神話を解き明かし、新たな『神話の再現』を可能にすることが、探索者達の使命──だったそうだ。

「でも今は、たった一つの神話魔法だけを求めている」
「ひとつだけ?」
「そう。名前は、『始まりの神話(オリジナル)』」

 なるほど……さっきシェラが反応したのはそのせいか。それはどんな恩恵を人類にもたらすのだろうか。

「シェラはその魔法がほしいのか?」
「そうとも言える、けど……違うとも言える。『始まりの神話』は、世界の始まりをうつしている、って言われている……それを見たいだけ。多分、あなたと同じ」

 そう言って、小さく微笑むシェラ。
 なるほど、シェラも俺と同じ願いなわけか。これは良い。異世界に来て最初にあった人物が同志だとは恵まれている。

「でも、今、世界中の探索者が『始まりの神話』を求めているのは、違う理由。殆どの探索者達が、権力者のために『始まりの神話』を探している」

 ……なんだか一気にキナ臭くなってきたな。

「『始まりの神話』から再現される神話魔法、『オリジナル』は、発動した者を(アルコーン)として、新世界を創造する魔法。権力者達は、自分が新世界の神になりたいから、『始まりの神話』を探している」
「新世界の神だぁ? しかもアルコーン? じゃぁ、その新世界とやらは、まともな世界にはならないわけだな」

 なるほど、そりゃぁシェラが権力者に渡したくない、と思うわけだ。欲にまみれた権力者がアルコーンなんかになっちまったら、そりゃ世界は終わりだな。

 ……ってあれ? なんでシェラはまた驚きに目を見開いてるんだ? その表情は、まるで……

「どうして、そう思うの?」
「お、悪かったか……?」

 すまん、あんまり人の感情とか空気を読むのは苦手でな。シェラも表情が全く変わらないタイプの無表情じゃなくて良かったよ。

 シェラは首を横にふる。

「『オリジナル』がもたらす世界が、まともじゃないって、あれを求めている人を一人も見ないで断言した理由は何かな、って……」
「だって『偽神(アルコーン)』だろ? そんなのがまともな世界を創造するわけがない」
「……?」
「お、もしかしてグノーシス主義がないのか
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