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素顔の正義
3部分:第三章
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第三章

 黒縁眼鏡に七三分けのだ。如何にも官僚といった彼がだ。北條を見てだ。
 そしてだ。憎々しげにこう言ってきた。
「また何か仕事を貰ったそうだな」
「それが何か」
「テロリストへの対処か?」
「如何にも」
「精々成功させるんだな」
 彼は北條が嫌いだった。同期の中で出世頭であるだけでなく飛び抜けて優秀でしかも嫌味な性格ときてはだ。嫌わない筈がなかった。
「そうするといい」
「いや、君も」
 頬を抓られてだ。北條は。
 そのお返しにだ。平手打ちを仕掛けてきた。
「今の仕事。何だったか」
「ある署の署長だが」
「その署で部下達に責任を押し付けているといい」
 こう告げたのだった。
「書類のミスや不始末のな」
「何を根拠に言っている」
 同期はだ。彼にそう言われてだ。
 顔を赤から紫に変色させてだ。ムキになった顔で言い返した。
「私がそんなことをしているというのか」
「後は愛人か」
 素っ気無くだ。北條は指摘し続ける。
「奥さんの他に。マスコミに嗅ぎ回れているそうだな」
「そんな事実はない」
「なかったら怒ることはないな」
 北條は全て知っていた。そのうえで言っているのだ。
「落ち着き給え。そのうちだ」
「そのうち、何だ」
「奥さんに知られて修羅場になるからな」
「よくそんなことが言えるものだな」
「何、気にすることはない」
 嫌味をだ。無表情で続けてみせてからだった。
 北條は去ろうとする。その彼にだ。 
 事実を指摘されそのうえで一番恐れている未来まで言われてだ。怒り心頭の同期はだ。吐き捨てる様だ。彼の背に声を投げ掛けた。
「一体身体に何が流れているんだ」
「血だ」
「相当汚い血みたいだな」
「私の身体には青い血が流れている」
「ふん、やっぱり人間の血じゃないんだな」
「ドラゴンズブルーの血だ」
 背を向けて歩きながらだ。彼は言った。
「それが流れている」
「中日ファンだというのか」
「そういえば君は巨人ファンだったな」
「何かあるのか、それで」
「残念だ。今年も巨人に優勝はない」
 またしても嫌味だった。野球関連の。
「あの無能なフロントでは貴重な予算を消費するだけだな」
「巨人は球界の盟主だ」
「自称だな。盟主と言うのなら」
 それならばだというのだ。
「西武にあそこまで華麗には負けないな」
 かつての日本シリーズ四連敗のことである。
「あれは見事だったな」
「よくもそんな昔のことを出すな」
「では堀内か。よくもあれだけ無能な監督を生み出したものだ」
「あれは何かの間違いだった」
「盟主は間違いを犯さないのではなかったのか?そして盟主なら毎年優勝して当然だが近年は優勝する機会もかなり減っているな」
「口の減らない奴だ」
「事実
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