十六話:現実と将来
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「良かった、気づいたんだ。もう大丈夫だよ、私があなたを守ってあげるから」
目を開けてボンヤリと自身を見つめる女の子にフェイトは心からの安堵の息を吐く。
そして、もう大丈夫だと、誰もあなたを傷つける人はいないのだと微笑みかける。
女の子はそんな彼女の笑みに一瞬きょとんとした表情をした後に弱々しく笑う。
「そっか…だから…おねえちゃん……あたたかいんだね」
「大丈夫、寒いの?」
「うん…。おねえちゃん…もっと……ぎゅっ…として」
自身の胸の中で小さく頷く女の子をさらに強く抱き寄せるフェイト。
だというのに、感じるはずの鼓動は余りに弱々しく、どうしようもなく彼女を不安にさせた。
このまま消えてなくなりそうな女の子を抱きかかえながら彼女はさらに速度を上げる。
だが、当の女の子は幸せそうにうつらうつらと瞼をまたたかせている。
「えへへ…あったかいね。…おかあさんみたい……。ねえ…おねえちゃん? ねむってもいい?」
「……うん、いいよ」
眠りたい。もしも常時であれば何の戸惑いもなく頷いただろう。
しかし、今にも死にかけの人間が言えば、それは死につながりかねない。
眠ってしまえば、何とか生きようとする気力が失われてしまいかねない。
だが、それでも、フェイトは頷いた。
それは、心のどこかでもう助からないと悟っていたからなのか。
それとも、ただ願いを叶えてあげたかっただけなのか。
フェイト自身にも分からない。
「ありがとうね……おねえちゃん…」
最後の最後に本当に救われたような笑みを見せ、女の子は目を閉じた。
そして、その後医療班により死亡が確認された。
名前が記されることもない墓石。
身寄りのない子ども達を弔う為に作られた墓。
そこに、今回犠牲となった子ども達も入れられた。
その前にフェイトとアルフは佇んでいた。
「結局誰も救えなかったね……」
「フェイト……」
「私がもっと早く突き止めていれば……私がもっと上手くできていたら……あの子達は生きていられたのかな」
任務としては違法研究所を潰し、研究者を捕縛できた成功の部類だったのかもしれない。
だが、フェイトの心には後悔の感情だけが渦巻いていた。
どうして、誰一人として救えなかったのだろうかと。
ただ、それだけの想いが心を占め、涙でさえ流すことができなかった。
「いつまでも悔やんでいても仕方がないよ。クロノだって言ってただろう?」
「分かってる。こんなところで立ち止まっているわけにはいかない」
どんなに悲しくて、辛いことがあったとしても自分は進まなければならない。
この道に進むと決めたのは自分自身なのだから。
泣き言は言わない。救えな
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