十六話:現実と将来
[2/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
にとっては人形そのものだったのだろう。
「合成獣でも作ろうとしたのかな……」
「そうじゃないのかい。ま、あたし達には到底理解できないだろうけどさ」
心底不愉快そうに鼻を鳴らしながらアルフは子どもたちの残骸を見つめる。
子ども達は証拠隠滅を図ろうとした研究者によって既に息絶えていた。
そのことに腸が煮えくり返るような怒りを覚えるが、この姿を見てしまうと素直に生きていれば良かったとは思えなかった。
仮に生きながらえたとしても彼らのその後の人生は決して楽なものではないことは明白だ。
しかも、腕の良い連中ではなかったらしく、先に拒絶反応を起こし死に、そのまま放置されて腐敗した子どもの姿もある。
「ねえ、アルフ。……誰か一人でも生きててくれるかな?」
「……きっと生きてるよ。一人ぐらいさ」
悲し気に問いかけてくる主に対し、アルフは優しい嘘を吐く。
正直に言えば、この光景を見た時点で生き残りは居ないと思っていた。
そもそもバルディッシュが生体反応を発見していないのだ。
フェイトとて、望みが薄いのは十二分に承知している。
だが、それでも奇跡的に生きていてくれないかと思わずにはいられなかった。
『Sir, there is a survivor.』
「…っ! アルフ!」
「了解!」
その瞬間にバルディッシュから奇跡的な報告が入った。
フェイトは目を見開き、ついですぐさま駆け出す。
先程まで生存反応が出ていなかったのは単純に死にかけている可能性がある。
何よりも濃厚な死の臭いが二人を急かした。
「見つけた、バルディッシュ!」
『Yes, sir.』
生存者は周りと同じく動物のように檻に入れられていたが微かに息をしていた。
フェイトは鍵を探す暇ももったいないとばかりにバルディッシュで檻の上部分だけを綺麗に切り取る。
そしてそれをアルフが殴り飛ばして退け、中に飛び込む。
中に居た女の子は全身に何も纏っておらず、その背中からは白い翼が生えていた。
アルフはその子を抱え上げ、檻から出してやりながら声をかける。
「大丈夫かい。声は聞こえるかい?」
「……ん」
女の子はアルフの言葉に弱々しい声を上げて反応を示す。
しかし、明らかに健全とは言い難い状態の為にフェイトとアルフの顔には焦りが浮かぶ。
一刻も早くちゃんとした施設で治療を受けさせなければならない。
そう判断したアルフは自身よりも余程速く動けるフェイトに女子を渡す。
フェイトも黙って頷き、女子を抱えてすぐさま飛び始める。
途中にある邪魔な壁は粉砕して飛んでいることからも彼女が如何に急いでいるかが分かる。
「……おねえちゃん…だあれ?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ