第五章
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「あの服と靴な」
「オランダの景色の中で」
「最高にいいぜ」
「欲しくなったわ」
ネットでのCMの視聴は鰻のぼりでだ、しかも。
会社にだ、民族衣装や帽子、クロンペンへの買いたいという声が殺到してだった。会社側はすぐにそういったものの販売を決めた。
それでだ、売り出すとだった。
どれも飛ぶ様に売れた、その最後にだった。
「オランダ料理もか」
「意外と、って感じでね」
アムステルダムのバーでだ、ホセとクリスティーナはビールを飲みながら話をした。
「人気が出たわね」
「女の子が宣伝してるからってな」
「まあそっちもね」
「利益上げてるな」
「だから私達の仕事はね」
あまり釈然としない調子で言うクリスティーネだった。
「成功したわね」
「社長もそう言ってくれたな」
「ええ、けれど」
「服や靴の方がな」
「売れてるわね」
「それも世界的にな」
「もう売り切れ続出よ」
そこまで売れているというのだ。
「我が社の株も急上昇よ」
「着てもらった女の子達の仕事も増えてな」
「いいこと尽くめね」
「ああ、けれどな」
それでもだとだ、ホセは。
大ジョッキのビールを飲みつつだ、彼もまた微妙な顔で言った。
「肝心のオランダ料理はな」
「利益は上げてるけれど」
「あまり宣伝にはなってないな」
「そうよね」
「結局我が国の料理はな」
「それ位のものかしら」
「宣伝の添え物に使った方がな」
民族衣装や靴のことに他ならない。
「売れるなんてな」
「我が国はそちらの方がってことね」
「料理jはこれといってないか」
「そうなるかしら」
「料理が注目されないでな」
「そうしたものの方が注目される」
「そうしたものなのか」
添え物にしたものの添え物にだ、逆になってしまうという位のものだというのだ。
「難儀な話だ」
「そうね、けれどね」
「社長は喜んでるしな」
「私達も功績を認めれてるし」
民族衣装やクロンペンが売れてだ。
「いいことね」
「そうなるな」
こう話して喜ぶことは喜んでいた、そして。
ビールの肴のソーセージやニシン料理を食べてだ、二人は共に言った。
「確かにあまりな」
「自己主張出来る味じゃないわね」
「そうだな」
これが二人が辿り着いた結論だった、自分達の国の料理への。民族衣装や靴はそうではなくてもだ。そちらはだった。
クロンペン 完
2016・1・29
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