第7話
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し乱れた髪を手で整える。
「ま、おかえしだな」
「やりすぎやっちゅうねん」
ひとしきりじゃれ合った2人は、遠巻きにそのやり取りを見ていた運転手に
謝罪の意もこめた会釈をしながら待っていた車に乗り込んだ。
それから来た時とまったく逆の道のりを経て、2人はゲオルグの住まう
官舎の前に到着した。
既に日は落ち、辺りは暗闇に包まれている時刻である。
車が停車し、運転手の手によってドアが開かれると、
ゲオルグは隣に座るはやてを目をやった。
彼の視線に気が付き、はやては怪訝な表情を浮かべる。
「なに?」
「あ、いや」
はやての短い問いかけに対して、ゲオルグは一瞬言葉に詰まる。
「ありがとな、誘ってくれて。 一緒に働けるのを楽しみにしてるよ」
「え? あ、うん。 こっちこそ」
あっけにとられたように口を半開きにして、ぽかんとしているはやてをよそに
ゲオルグは彼女に向かって手を振ると、車を降りて官舎の中へと入っていった。
その後姿をぼんやりと見送ったはやては、ゲオルグの姿が建物の中へ消えてからも
しばらくそのぼんやりとした視線を官舎の玄関に向けていた。
「・・・騎士はやて?」
そんな彼女をいぶかしんだ運転手が車の外から彼女の顔を覗き込むようにして
尋ねると、彼女はフッと我に返った。
「んっ!? あ、うん。 なに?」
「いえ、これからいかがいたしましょうか?」
控え目に尋ねる運転手に向かって、はやては首を傾げる。
「いかがって・・・何が?」
「いえ、ですから、どちらまでお送りすればよろしいでしょうか?」
そう言われて、自分がなにを問われているのかはやては把握できた。
バツが悪かったのか、彼女は少し目線を落とした。
「自宅に帰るわ」
「承知しました」
はやてが一瞬考えたのちに答えると、運転手は鷹揚に頷いて
静かにドアを閉めると運転席に戻った。
そして、車は滑るように走りだす。
窓越しに流れていく景色に目をやりながら、はやては先ほどまで隣に座っていた
友人のことを思う。
「それにしても、もうちょっと自分自身のことを信用してもええのになぁ・・・」
小さくそう言うと、自らその考えを否定するようにかぶりを振って天井を見上げた。
「いや、信用されてへんのは私のほうかな・・・」
そして彼女は自嘲めいた笑みを浮かべると、再び小さく首を横に振った。
「なんて、私もゲオルグくんのこと言えへんなぁ・・・」
それから1週間ほどたった、ある日の午後のことである。
昼食を終えたゲオルグがエレベーターから降りると、その姿を見つけた班員の一人が
息を切らせて駆け寄ってきた
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