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この異世界に統一神話を ─神話マニアが異世界に飛んだ結果─
03
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ボンと、どこか違和感のある素材のシャツで覆っている。さらにその上から白衣を羽織っていた。

 髪の毛はボサボサの癖毛だ。色は黒。目は閉じられている。

 そして何より──その頭から、血を流していた。部屋の床に頭から倒れて激突したのだろうか。

 兎に角、先ずは止血をしなくては。

「──『簡易治癒(デミヒール)』」

 発掘魔法の中に、応急処置用の魔法があって本当に助かった。回復魔法師達の操る回復魔法の劣化版に過ぎないが、止血には十分だ。後から強力な回復魔法をかければ──

「……っ!」

 しかし、シェラのその想定は無駄になった。

 何故ならば、『簡易治癒』を受けた瞬間、ものすごい勢いで青年の傷が治り始めたからだ。『簡易治癒』にこれほどの回復をなすことは、一流の魔法使いがこの魔法を行使しても不可能だ。

「……嘘……いくらなんでも、早すぎる……?」

 変だ。

 そもそも、何故こんな遺跡の奥深くに部屋があって、そこに人間の男性が転がっているのか。ここはどこなのか。この男は誰なのか──

 そんな事がシェラの駆け巡っている間に。

「ぐ、うぅ……」
「……!」

 青年が、目を覚ました。


 ***


「……大丈夫?」

 優しい声がした。

 静かな声だ。人によっては、冷たい声だ、と言うかもしれない。でも、俺には優しい、慈愛のこもった声に聞こえた。

「……ああ、多分……」

 無意識的に、そう返した。

「……よかった」

 また、あの声。静かで、優しい声。メゾアルト、と言うのだろうか。俺の耳に、よく合う女性の声──

 ──女性の声?

 目を開ける。始めは合っていなかったピントが合い始める。視界に写ったのは、心配そうにこちらを除き混む、髪の長い女性。西洋人、の様な気がするのだが、何か違う気もする。20歳前後か。物凄く可愛い。憂いを帯びた表情……まぁぶっちゃければ無表情だ。
 何よりも──髪が、青い。水色、あるいは空色と言うのか。美しい青色の髪の毛。そんな色の髪は、これまで見たことも聞いたこともない。いや、神話とか創作物の中じゃぁ普通なのだが……ここは現実だ。

 ──いや。本当に現実なのだろうか? 俺の見ている夢か何かでは無いのか。

「君は……誰だ?」
「……あなたこそ」

 少しむっ、としたような表情を取りながら、女性は俺に言う。そうだな、女性に先に名乗らせるのは失礼かもしれない。

「悪い。俺は煌我……日登煌我という」
「ヒノボリ・コウガ……? 私はシェラ。シェラ・アルブルート」

 シェラ、か。綺麗な名前だ、と、率直に思った。我ながら気持ち悪い考えだな、と思うのだが、神話やら童話やらを色々読みふけっているう
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