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この異世界に統一神話を ─神話マニアが異世界に飛んだ結果─
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していた頃の大神話探索時代を取り戻したい。人類の発展と、知的好奇心の充足だけを求めて、神話を研究する、あの時代を。
 だから独立して、19歳の若さでソロ探索者(シーカー)をやっているのだ。

 ──しかし、世界は異端児(シェラ)には甘くない。

 シェラは独立してからもうすぐ二年が経つ。が、未だに『始まりの神話』に到るための手がかりや、あるいはバヴ=イルの研究機関が望むような『結果』を何一つ出していない。

 バヴ=イルの研究機関は全ての探索者に支援を約束しているが、二年以上功績を一つも残さなかった探索者には支援を行わなくなるのだ。

 ソロの探索者であり、権力者のバックアップを受けていないシェラは、支援の殆どをバヴ=イルに頼っている。故に、バヴ=イルのデータベースが閲覧できなくなったり、大図書館を利用できなくなることはかなり痛い。

 なにより、バヴ=イルに『破門』されることは即ち、探索者の資格を失ったことにほぼ等しい。

 そして。
 なにもしなければ、その未来は、シェラのもとに訪れる。シェラを応援してくれる友人はいるが、その人の助けだけでは探索者を続けていくのは難しいだろう。

 しかし、二年が経つまであと僅かとなったシェラに、あらたな功績を残すことは非常に難しい。なんとかする方法はないか、と、半ば神頼みの様な状態で、父の遺品を開いた時。

 見つけたのだ。父が半ばまで発掘しながら、バヴ=イルに研究結果を発表することなく、彼の死によって発掘が中断した、遺跡の情報を。

 父が纏めていた資料によれば、ガルシェ都市国家連合のとある無人島にあるというその遺跡は、どうやらガルシェ神話の主神である"ケラウネイオス"の神殿の跡地らしい。
 ケラウネイオスは強大な神だが、彼単体を祀った神殿はあまり発見されていない。大抵の場合は他の神々を従えるかたちで、大神殿に祀られているからだ。

 ケラウネイオスの神殿。それの発掘を完了させれば、間違いなく功績を得ることができる。

 そうしてシェラは、ここにいる。


「……」

 坑道は、思ったより長く続いていた。父は想像よりもかなり発掘を進めていたらしい。しかし、その坑道も何時かは終わりがやって来る。

 ガルシェによく見られる神殿の構造が剥き出しになったその壁は、シェラの行く手を大きく塞いだ。一昔前までなら、たった一人でこれをどうにかすることなと不可能であっただろう。

 しかし現代(いま)は、違う。シェラの父が遺した発掘魔術が、遺跡探索の常識を変えたのだから。

「──『採掘:坑道作成』」

 壁にてを当て、そう唱える。直後、ガリガリガリ、という音と共に、壁が削れ始めた。それだけではない。崩落しそうな天井は補強され、新たな坑道が出来上がっていくで
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