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この異世界に統一神話を ─神話マニアが異世界に飛んだ結果─
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 薄暗い坑道を、シェラ・アルブルートは、ゆっくりと歩いていた。既に開発された洞窟だ。崩落の危険は少ないとはいえ、何があるのかは分かったものではない。

 ここは、ガルシェ都市国家連合に属する、名もない無人島の一つ──そこにある、『神代神殿』の遺跡だ。

 最も、都市国家連合の資料にも、バヴ=イルにある探索者ギルドのデータベースにも、この遺跡のことは載っていない。発見されてから、この遺跡に入るのは、シェラが二人目となる。

 この遺跡は、シェラの父が発見し、誰にも教えることの無かった神殿跡だ。

 シェラの父は、探索者(シーカー)だった。探索者とは、各地の遺跡を発掘して、神代の歴史を紐解き、それらを起源とするこの星の叡智──『神話魔法』を発見する……そんな役職だ。

 同じく探索者だった父親、つまりシェラの祖父に憧れて探索者となった父は、様々な遺跡を発見していった。特に砂漠帝国地方の古来信仰、『知的聖霊(ジン)』の発見による、汎用神話魔法の発見、そして『発掘魔法』の体系化は、彼の最大級の功績だ。
 父の功績によって、誰でも神話魔法を使える時代になったし、探索者達の発掘は一気に安全になった。さらに、大規模な調査団(レイド)を編成せずに、小規模の調査隊(パーティー)で発掘をできるようになったのだ。

 やがて同じく探索者だった母と出逢い結婚、シェラが誕生する。

 幸せの絶頂──しかし、それは長くは続かなかった。
 父の功績を妬んだ者の手によって、父は母と祖父と共に、事故を装って暗殺された。今では下手人は断罪された後ではあるのだが、しかし未だに父を妬む者達は後を絶たない。

 それに──いつの間にか、探索者の役割は、変わってきてしまっていた。

 人々の生活を支え、救済し、守るための力。それが神話魔法だ。それを発見、或いは開発し、人々の生活を豊かにすること。それが、探索者の使命だった筈。なのに 今、探索者達は、たった一つの神話魔法を発見するためだけに動いている。

 名を、『始まりの神話(オリジナル)』。
 バヴ=イルの黄金都市から発見された、今はこの世になき神々の言葉を伝える神話魔法、『神託機』。それが世界中にその存在を知らせしめたのだ。

 その効果は、いたって単純。しかし、圧倒的。

 ──使用者を『(アルコーン)』とし、新世界を創造する。

 それが『始まりの神話(オリジナル)』の内容。

 世界中の権力者達が、新たなる神とならんと欲し、『始まりの神話』を求めた。彼らの名を受け、探索者達は『始まりの神話』の手がかりを求めて奔走する。

 それが今の、大神話探索時代の、実状。欲望にまみれた時代。

「……そんなのは、嫌」

 シェラはそう独りごちる。

 シェラは、父親が活躍
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