Chapter 5. 『あんたを倒して俺は帰る』
Episode 30. I am always with you
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その私がまた一護の瞳に映り込む。互いが互いしか映していない、視線の合わせ鏡。甘美なそれに、また口元が緩む。
けど、今度は隠さない。再び零れる涙も拭わずに、
「……ありがとう。ありがと、一護……すごく、すごく嬉しいよ……っ!」
私は精一杯の笑顔で、一護にお礼を言った。
一護は面食らったような顔で私を見た。息を飲むのが、喉の動きで分かる。心なしか頬が赤い。羞恥以外の、何か別の感情が見て取れる。鋭い両目は見開かれ、私の顔に固定されている。
……これ、ひょっとして……私に、見惚れてくれてる、のかな?
つまり、初めて、私のアプローチが成功した、ってこと……?
そう思った瞬間、勝手に手が動きだした。
両手を上に伸ばし、一護の後頭部に回す。そのままゆっくりと力を込めると、彼の顔がぐぐっと下がってくる。抵抗らしい抵抗はない。
告白はしない。
けど、ちょっとだけ。ちょっとだけなら、許される気がする。
そう、お礼に、き、キスするだけ。
それくらい、いいよね……?
熱でボーッとする頭で自問自答しつつ、さらに一護の顔を引き寄せようとした、その時、
「いやーっ、わりぃわりぃ!! 狩りが長引いて遅れちまったぜ!! 誕生日おめでとさんだぜリーナぁ!!」
胴間声で喚き散らしながら、クラインが背後の扉から飛び込んできた。
一瞬で会場全体の空気が凍りついたのが分かった。一護の表情も、ひきつったものへと変わっている。多分、周囲のみんなの顔も似たような感じだろう。
でも、今はどうでもいい。
やるべきことが、あるのだから。
一護から両手を放して、私は無言で短剣を抜く。敵との距離は、推定三メートル。踏込二歩で詰められる距離。単発重攻撃も、十分に届く間合いだ。
「え、えーっと、リーナ、嬢ちゃん……? なぜに剣を抜いて俺を睨んでいらっしゃるのかな……?」
ヒゲ面をひきつらせるバカヤローの言葉に、私は答えない。
代わりに、
「――【恐怖を捨てろ。『死力』スキル、限定解除】」
限定解除を発動。蒼光が私の体を覆い、噴炎のように燃え上がる。
言いたいことは山ほどあるけど、その前にまず、
「……いっぺん死ね、ヒゲ山賊!!」
空気読めないこのバカを半殺しにしなければ!!
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