Chapter 5. 『あんたを倒して俺は帰る』
Episode 30. I am always with you
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ったゼ?」
「テメエ、余計なコト言うんじゃねえよアルゴ!!」
ニシシ、と意地悪そうな顔で笑うアルゴと、それにツッコむ一護。しかめっ面なのはいつも通りだけど、どことなく照れの色が入っているようにも見える。
……つまり、彼は誕生日を忘れていたわけじゃなくて。
私に内緒で、このパーティーを計画してくれてて。
こんなにきれいなマフラーまで仕立ててくれて。
「……まあ、その、なんつーか、最近オメーに世話になることが多くて、なんかのタイミングでちゃんと返さねえと、って思ってたんだ」
ガリガリとオレンジの髪を掻きながら、一護がぶっきらぼうな口調で言葉を紡ぐ。
「この世界に来てから二年弱の間、俺はリーナに色々なことを教わった。装備の相性とか、クエストの進め方のセオリーとか、スキルのバランスとか、多分俺一人だったら全部デタラメにやっちまってたハズだ。そうしてたら、多分俺は今ほど強くはなれなかった。だから、そんな俺がここまで強くなれたのは、オメーがずっと隣にいてくれたからなんだ。
ホームの代金なんかより、ずっとずっとデケえ恩だ。ホントに、感謝してる。その借り全部、とまでは言えねーけど、せめてその万分の一でも、コレで返せたらなって思って、この席を企画したんだ」
ま、慣れねーコトやったから段取りミスりまくったんだけどな、と彼は苦笑いを浮かべた。その顔はいつも通りに不器用で、けれど優しかった。
――正直、私は不安だった。
私の独りよがりの献身が、彼の迷惑になっているんじゃないか。心のどこかで、そう思ってた。でも、私にはそれしかできないから、そうする他に道は無かった。
でも、それは杞憂で。
一護はちゃんと分かってくれてて。
どころか、私に「感謝してる」なんて言ってくれて――!
思わずマフラーを引き上げ、顔を隠した。
こんなの、こんなのズルい。ズルすぎるよ。
貴方に祝ってもらえただけですっごく嬉しいのに、私の勝手な世話焼きに、感謝してる、なんて言ってくれて。手間をかけてこんなパーティーまで考えてくれて。
嬉しさが溢れだして、勝手に笑みが、涙が、零れてくる。真新しいマフラーに、とめどなく溢れる熱い涙がしみ込んでいく。
ねえアスナ、私、やっぱり自分にお休みなんてあげられないよ。
こんなにも好きで、好きでしょうがなくて、心が勝手に一護を求めるんだから。
一センチでも近くに、一瞬でも長く隣に、そう言って、私の体を突き動かす。感謝一つで、こんなにも舞い上がっちゃう。そのくらい、彼のことが愛しくてたまらないんだから。
ぐしぐしと涙を拭きとってゆっくりと顔を上げると、少し戸惑ったような表情の一護と目が合った。私の瞳に彼が映り込み、
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