Chapter 5. 『あんたを倒して俺は帰る』
Episode 30. I am always with you
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私も応援してるから!」
――えっ?
つ、妻?
唐突に出てきたびっくりワードに一瞬思考が固まり、再起動した頃には、アスナは大きく手を振りながら去っていくところだった。
彼女のライトブラウンの長髪が陽光を反射して金糸のように輝く光景は、私には太陽より眩しく見えた。
◆
そのまましばらく、私は二十二層を散策していた。
アスナと話したからか、沈んでいた気持ちは幾分か和らいだように感じる。
のんびりする時間がないことは変わらないけど、たまには自分のことも考えないと。一護のことばかり想った結果、成就云々の前に私が自滅してしまっては元も子もない。そう思えるくらいには、気持ちが回復していた。
辺りはもう既に夕暮れの色に染まっていた。既に辺りに人影はない。
濃い臙脂色に塗りつぶされた湖面を見やりながら転移門広場に戻ったとき、メッセージの着信を示すアイコンが出現した。
差出人は一護だった。昔よく行ってたマーテンのNPCレストランで落ち合おう、そんな内容のことが書かれている。当然、誕生日のことについては一切触れられていない。
けど、落ち込むことはなかった。
覚えてないのなら、会いに行って今日が誕生日であることを告げればいい。忘れてたの? この甲斐性なし、と、いつものように言ってしまえばいいんだ。
その程度で嫌われるような関係じゃないことぐらいは分かっているし、多分一護もその方がやりやすいはずだ。彼がバツ悪そうに髪を掻く姿が鮮明に頭に浮かぶ。
私に魅力がないことに関しては、今はどうしようもない。今までの失敗を気にしつつ、彼に好いてもらえるように日々頑張るしかない。彼のお母さんの墓前で、欠かさないと誓ったのだから。
転移門からマーテンへと飛び、そこから歩くこと数分。目的のお店に着いた。今日は珍しく空いているようで、いつも人が溢れているテラス席は空っぽだ。入り口で突っ立ってるのもなんだし、中に入って待っていよう。
重い木の扉に手をかけ、グイッと引っ張って開けて――
「「「誕生日、おめでとう!! リーナ!!」」」
途端、大勢の祝福の声が響き渡った。
同時に鳴り響く拍手の音。炸裂するクラッカー。大量に舞い落ちる紙吹雪。
ハロウィンに合わせたらしいカボチャのランタンが店内のそこかしこに灯り、テーブルの上にはとてつもない量の御馳走とワイン。
そして、正面最奥に掲げられた『Happy Birthday Lina!!』の横断幕。
……その、これって、つまり……え?
状況を頭が消化しきれず、その場にボーッと突っ立っていると、背後から軽快な声がした。
「ほーい、遅刻組の二人、連れてきたゼ……って、リっち
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